PRESENCE (LED ZEPPELIN)

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PRESENCE (LED ZEPPELIN) / 1976年2月24日発売(英)

1976年と言えば パンクロックが流行し始めた頃で 古いスタイルのままのロックでは もう受け入れられなくなりかけて来た時代でした。LED ZEPPELIN も 前2作 House of The Holy, Physical Graffiti で 時代の流れと共に 自らも変わって行こうとしていたかの様に見えました。ところがこのアルバム PRESENCE では意外にも初期のスタイルに戻り、迷いが吹っ切れてしまったようです。

具体的には ジョン・ポール・ジョーンズによるシンセサイザーなどのキーボードでのオーケストレーションの類が全くないこと、アコースティックギターによって構成される曲が全くなくなったことです。なぜ、急にこのような方向転換が行われたかは わかりませんが、初期のZEP のアルバムにみられるブルースを主体とした緊張感のある攻撃的なロックに戻ったといってよいでしょう。アルバムの出来としては Ⅱと同等に評価したいと思います。

1曲目の Achilles Last Stand はZEP のスタジオ録音としては 10分を超える最も長大な曲です。この曲は ZEP 史上、Stairway to Heaven と同等の評価を受けている名曲です。ZEP がデビューした頃、ZEPの リハーサルを遠くで聴いていた他のグループのメンバーが 「あのグループにはドラマーが2人いるのか」 と言ったという話が残っています。この曲でのボンゾのドラムは まさに この話どうりの 圧倒的迫力で 中心的役割を果たしています。一方、この時期の ジミーペイジは ヘロイン中毒が進み、コンサートでは あまり難しい曲を演奏しなくなったばかりか、演奏上のミスも多いことは、bootleg でも指摘されていますが、この曲では 完全復活とも思わせるテンションの高さです。Stairway to Heaven の様に静かに始まるのではなく、ボンゾのドラムの一撃を合図に ほとんど緩徐な部分なしにパワフルな演奏が最後まで続きます。よく注意して聴いてみると分かりますが、この曲のギターパートは何重にもダビングが繰り返してあり この曲を雄大な感じにするのに貢献しています。調べた所では 1ダースに余るダビングを一晩でやり遂げたそうです。2003年に発売されたDVDには 1979年のKnebworth Festival での Achilles Last Stand の演奏が収録されていますが、このオーバーダビングされたギターの曲を ジミーペイジは ギブソン・レスポール1本ですばらしく演奏しており、彼のアレンジャーとしての才能は 並ではないと思われました。

Achilles Last Stand のインパクトがあまりにも強すぎて、後の曲の印象が薄くなってしまいそうですが、2曲目の For Your Life は2007年の再結成コンサートで 初めてライブで演奏された曲で この曲もドラムの重低音が心地よく、ブルースの香りのする曲です。残りの曲もペイジのギターと ボーカル、ベース、ドラムの絡み合うシンプルながらも聴かせてくれる曲ばかりです。この頃になると ペイジのギブソン・レスポールの音は初期の頃に比べて、distortion (ひずみ) のかかり具合が やや少なくなって来た感じがします。

最後の曲の Tea For One は 私のお気に入りで この時期にジミーペイジがこのようなブルースギターを聴かせてくれるとは思いませんでした。彼は 伝統的なブルースを自分なりにどう解釈できるか挑戦してみたと言っています。