関節リウマチの治療目標とは

治療目標 ( 関節リウマチによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態である臨床的寛解の達成 が目標 ) を明確にし、目標達成に向けた治療法 ( Treat to Target, T2T ) を行うことが重要

糖尿病や高血圧は慢性疾患であり、コントロールを十分に行わないと重篤な合併症の併発や身体障害になる恐れがあり、その結果、生命予後が悪化する可能性のある疾患です。そのため、これらの疾患では 治療目標を明確にし、目標達成に向けた治療法 ( Treat to Target, T2T ) が提唱されています。これらの慢性疾患では、T2T の概念を用いた厳密な管理により 長期の予後が改善することが すでに明らかになっています( 糖尿病では ヘモグロビンA1c が 7 % 未満; 高血圧では血圧 140/90 、心血管系の合併症の発生率を低下させるため LDL コレステロール値 70 mg/dl、が治療目標 )。

これらのことから 近年、関節リウマチ (RA) においても目標達成に向けた治療法(T2T) による治療戦略が求められており、実際に多くの論文報告でも T2T で RA の長期の予後が改善することが示されていました。
2009年の欧州リウマチ学会 ( EULAR ) による RA 治療の勧告によると 関節リウマチの治療目標は すべての患者において 早期 RA では 「寛解」、もしくは 罹病期間の長い RA では「低疾患活動性」にすべき とされました。そして、その治療目標が達成されるまでは 1~3ヶ月毎に疾患活動性の評価を行い、薬物治療法を見直します。その結果、目標が達成されれば、維持療法を行い、3~6ヶ月毎に疾患活動性を評価し、再燃すれば薬物治療法を変更し、寛解あるいは低疾患活動性を維持してゆきます。

20110506-01「寛解」や「低疾患活動性」を治療目標とするのは 様々なデーターの解析で関節破壊の進行は 低疾患活動性 さらには 寛解の達成によって 最も抑えられることが示されたからです。しかし「寛解」の基準として万人が認めるものは まだ存在しません。現時点では RA の活動性(勢い)がない状態、つまり 痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態とされ、臨床的寛解と言われています。その評価には 後述する DAS28, SDAI, CDAI 基準が使用されています。

また アメリカリウマチ学会 ( ACR ) と 欧州リウマチ学会 ( EULAR ) も合同で 2010 年に 2 通りの RA の暫定的な寛解基準案を発表しています(右表)。

RA の疾患活動性を評価する方法として 最近では DAS28, SDAI, CDAI などの評価方法が利用されています。それぞれ 四肢 28 関節の圧痛関節数、腫脹関節数、赤沈値や CRP値、患者や医師の全般改善度 ( VAS ) により計算され、高疾患活動性、中等度疾患活動性、「低疾患活動性」、そして「寛解」と分類評価されます(下表)。

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治療目標達成のためには、
関節破壊がおこる前の早期診断 (2010年 ACR/EULAR RAの新診断基準 - 2010.10.12 Topics 参照) と メトトレキサート( MTX )を基本薬とし、
必要に応じて生物学的製剤 ( 抗サイトカイン療法 - 2010.10.15 Topics 参照 ) を用いる早期治療 で、十分な疾患管理を行うことが重要です

(2011.05.07)