DEEP PURPLE IN ROCK ( DEEP PURPLE )

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DEEP PURPLE IN ROCK ( DEEP PURPLE ) / 1970年6月発売

Classic Rock を語る上で MOUNTAIN や TEN YEARS AFTER を知らなくても LED ZEPPELIN と DEEP PURPLE を知らない人は少ないと思われます。 この 2 つのバンドは何かにつけてよく比較されますが、 両者は原点からして全く異なっており 比較することに意味があるとは思われません。 しかし、両バンド共、リフ主体の音楽を追求し、そして大成功したという共通点があります。
LED ZEPPELIN の音楽の原点は YARDBIRDS から引き継がれたブルースと 英国のトラッド・フォークにあり、それらのルーツ・ミュージックを Jimmy Page が大胆な着想のアレンジと繊細な技術で改造して行ったもので、いわゆるハード・ロックというものでは決してありませんでしたし、彼らもそう主張しています。一方 DEEP PURPLE はクラシック音楽の基礎から教育を受けたキーボードの Jon Lord が中心になって作り上げ、さらにブルース・ロック全盛期にありながらロック・ギターにクラシックギターのフレーズを導入してロックの音楽の幅を大きく押し広げたと言われる Ritchie Blackmore が強力なロックンロールのリフで味付けをして大成功をおさめたバンドでハード・ロックの元祖とされています。LED ZEPPELIN と異なり、はじめからブルース色はほとんど感じられません。

DEEP PURPLE はメンバー・チェンジが多く行われ、これが本国において LED ZEPPELIN に人気の面で水をあけられた原因の一つと思われます。名盤が登場したのはボーカルの Ian Gillan が在籍した第2期と David Coverdale (現 WHITESNAKE ) が在籍した第3期です。ここではアルバム「DEEP PURPLE IN ROCK」「MACHINE HEAD」 「BURN」「LIVE IN JAPAN」を紹介したいと思います。

DEEP PURPLE は1968年に結成されましたが、初期の頃はキーボードのJon Lord が中心となって音作りを行っており、クラシックの影響が強く、発表した3枚のアルバムは評価はされたものの 売り上げは全く芳しくありませんでした。ところが同じ頃、同国からデビューした LED ZEPPELIN が本国およびアメリカで大成功をおさめ着々とその地位を築きつつあり、それを目の当たりにしたギターの Ritchie Blackmore が 強力なギター・リフとロックンロールのビートによるハード・ロック路線を歩むことの正しさを確信し、それまでJon Lord が持っていた音楽の主導権を握り、さらにボーカルを LED ZEPPELIN の Robert Plant の様に ハイ・トーンの出せる Ian Gillan に交代させ、ハード・ロック色の強いアルバムとして作りあげたのが、名盤「DEEP PURPLE IN ROCK」でした。

このアルバムに限らず ほかのアルバムでも DEEP PURPLE に特徴的なのはキーボードとギターの見事な掛け合いによる共生です。これほどキーボードがギターと対等に張り合える事のできるバンドは他にはなかなか見当たりません。Jon Lord のハモンド・オルガンの特徴は Marshall アンプを使用することによりギターに負けない distortion の効いた迫力のある音を作り出していることで、後のロック・キーボードの教科書的存在となりました。また 音楽的にはクラシックだけでなく Jimmy Smith に強く影響を受けたとされるジャズ的アプローチも彼の特徴です。また このアルバムから加わった Roger Glover の Rickenbacker ベース のメタルっぽい音もその後の DEEP PURPLE の音作りに大きな影響を与えたと言えるでしょう。

このアルバムは全曲が強力なギター・リフを持ったハード・ロックで すべてが聴いていて心地よくなります。LED ZEPPELIN の持つブルース的な重厚さではなく、スピード感のあるハードな曲が多いのが彼らの特徴です。

第1曲目は静かな教会に鳴り響くようなオルガン、そしてギターと同じリフを弾くGlover のベース、さらに強烈な爆音の Ritchie のギター、耳に残るハイ・トーンの Gillan のボーカルが特徴の名曲「Speed King」 です。この曲の間奏での Jon Lord のジャズ風のハモンド・オルガンとRitchie Blackmoreのギターの掛け合いは見事です。

アルバム中 最も印象に残るのは「Child In Time 」です。キーボードと Gillan のボーカルで静かに始まり徐々に盛り上がっていき、やがてギターが加わり頂点に達します。中盤でのギターソロは圧巻で、それが終わるとまた キーボードとボーカルの静寂の世界に戻ります。この曲ではGillan のハイ・トーンのボーカルが素晴らしく、静けさと爆音の共存が素晴らしい効果を出しています。

他の 「Bloodsucker」 「Flight Of The Rat」「Into The Fire」 なども ハード・ロックとして良い出来です。

このアルバムには収録されていませんが(1996 年発売の25周年記念盤には収録されている)、同時期にシングル盤として発売された Black Night は日本でも大ヒットし、 ギター・リフの人気投票で常に上位にランクされる名曲です。

発売後40年以上たっても 聴く人をワクワクさせてくれるアルバムというのは本当の名盤と言ってよいでしょう。