RF( リウマトイド因子 )およびACPA( 抗CCP抗体 )の意味をあらためて考える ー 最近わかってきたこと

 

RF( リウマトイド因子 )は関節リウマチに感度が高い一方で特異度が低いという欠点があります。ACPA( 抗CCP抗体 )はRFと同程度の感度がありながら、特異度が高い抗体です。

関節症状(痛み、はれ)を有する場合は両者ともRAの早期診断には有用であるが、無症状の場合は RFのみ陽性の意義は乏しいとされます。一方で RF, ACPAともに陽性の場合は無症状であっても近い将来のRA発症を強く示唆する所見です。

最近の研究でACPA陽性の関節リウマチの発症には喫煙と歯周病という環境因子の関与が指摘されています。さらにACPAそのものにも病原性があることが明らかになりつつあります。

 

定期健康診断(人間ドック)でRF( リウマトイド因子 )の陽性を指摘され、「私は関節リウマチなのでしょうか」と不安で来院される方がいます。このような不安をかかえないためにも再度、RF( リウマトイド因子 )そして関節リウマチの診断に欠かせないACPA( 抗CCP抗体 )について その意義を確認しておきましょう( 2010.12.12のトピックスも参照してください)。

①RF(リウマトイド因子)

RFは免疫グロブリンのFc領域に対する自己抗体です。関節リウマチ患者におけるRF陽性率は70~85%と高く、長年診断におけるもっとも重要な血液検査とされて来ました。しかし 一方では特異度(関節リウマチではない患者群における陰性率)が40~90%と低いのが問題です。RF陽性となる疾患は全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群をはじめとする膠原病、感染性心内膜炎やウイルス感染などの感染症、悪性腫瘍などです(表1)。また健常人の 5%が陽性です。さらに加齢とともに陽性率は上昇し、高齢者では陽性率が 10%を超えるという報告もあります。

 

②ACPA(抗CCP抗体)

ACPAは関節リウマチに対して70~80%の陽性率で特異度は97%と高く、関節リウマチ診断には有用です。RFより陽性率は低いが他の膠原病や感染症で陽性になります。また結核の時には高率に陽性化しやすい( 34.3% )ので注意が必要です(表2)。健常人でも1.7%が陽性です。

 

③一般検診の結果からみた RF, ACPAの意義

日本において一般人を対象とした健康診断時にRFとACPAを同時に測定した1万1758人中、RF陽性は1271人( 10.8% ), ACPA陽性は154人( 1.3% ),  RF・ACPAともに陽性は98人( 0.8% )で RF, ACPAともに高年齢層で陽性率が高くなる傾向が見られました。

これらの陽性者を平均17ヶ月追跡調査した結果、初診時および経過中に関節リウマチと診断された割合はRF単独陽性者の 0.9%、ACPA単独陽性者の 10%、RF・ACPA両陽性者の 30.8%でした。海外の報告でも同様の結果です。

この結果より健康診断において無症状でRF単独陽性の場合は病的意義は乏しいことがほとんどですが、RF・ACPAともに陽性なら無症状であっても将来の関節リウマチ発症の強い予測因子と考えられています。しかし実際の健康診断ではRFのみの測定がほとんどなのでRFが陽性ならばACPAを追加測定することが必要です。

 

最近わかってきたACPAの臨床的意義

ACPAは関節リウマチの診断に必須の検査ですが、関節リウマチの病態にも関係していることが最近わかってきました。

#1. ACPA陽性の関節リウマチの発症にかかわる環境因子として喫煙と歯周病が指摘されています。

非喫煙者と喫煙者(現在、過去を含む)で分類すると有意に喫煙者でACPA高値陽性率が高いことがわかりました。また歯周病の重症度を4段階に階層化すると歯周病の重症度とACPA陽性率がきれいに相関しました(図1)。

 

#2. ACPAそのものに病原性がある。

ACPA陽性関節リウマチは ACPA陰性関節リウマチと比較して骨破壊が強いという報告があります。また動物実験でACPAの投与による関節炎の悪化やACPAの破骨細胞活性化作用、さらに破骨細胞を介した痛みの惹起作用なども報告され、ACPAそのものの病原性も推測されています。

図1 健常人におけるACPAとRF産生におよぼす喫煙と歯周病の影響

           A: 喫煙者、非喫煙者におけるACPA高力価(2+)またはRF高力価(2+)の頻度

           B: 歯周病の重症度を4段階に階層化し、それぞれのACPA陽性率, RF 陽性率を示した

 

 

(参考文献)

1. Miriam A. Shelef. New Relationships for Old Autoantibodies in Rheumatoid Arthritis.  Arthritis Rheumatol,  71:1396-1399, 2019.

2. 大村浩一郎:医学のあゆみ、258:927-931,2016.

3. 六反田 諒:日本医事新報、35-39,2017.

 

(2020.02.10)