FLOWERS OF EVIL ( MOUNTAIN )

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FLOWERS OF EVIL ( MOUNTAIN ) / 1971年11月発売

70年代のアメリカン・ロックの夜明けは Grand Funk Railroad (GFR) と共に MOUNTAIN を抜きには語れないでしょう。 MOUNTAIN は 1969年に結成され、72年に一度解散していますが、その後も何度か再結成、解散を繰り返しています。
MOUNTAIN は登場した時「アメリカの CREAM 」 と呼ばれ、ギターの レスリー・ウエストはエリック・クラプトンの再来とまで言われました。その訳はベースのフェリックス・パッパラルディが あの CREAM のプロデューサーであり、曲によっては自ら CREAM のキーボードを担当していたからです。彼は、ミシガン大学でクラシック理論を学んだ後、妻であり MOUNTAIN のアルバム・アートワークを担当したゲイル・コリンズと共に MOUNTAIN のプロジェクトに参加したわけですが、 CREAM の解散後、第2の CREAM の結成を企てていたと言われています。
フェリックス・パッパラルディは、MOUNTAIN の結成にあたり ほとんど無名だったギタリストのレスリー・ウエストを発掘しましたが、 ドラムとキーボードも無名の新人を選んでいます。
レスリー・ウエストのギターは これ以上ないぐらい強く distortion (歪み)を効かせた爆音が特徴で パッパラルディのベースと共に MOUNTAIN サウンドの要をなすものです。当時多くのアーティスト達がギブソン・レスポールやギブソンSG を使っていた中で、レスリー・ウエストは当時としても貴重な1954年型レスポール・ジュニア(写真中央)を使用しており、このギターの独特の音が強烈な MOUNTAIN サウンドを作り出していました。また彼が得意としたハーモ二クス奏法もこのギターが特に この奏法に向いていたからとも言われています。
フェリックス・パッパラルディのベースも CREAM のジャック・ブルースと同じく ロックにおけるベースの役割を単なるリズム楽器からギターと同等のメロディー楽器に変えてしまったと評価されています。彼のうなるような distortion の効いたベース音は ギブソンEB-1 と言うベース(写真右)の音ですが EB-1 にしか出せない音というのがあるらしく、これが彼が EB-1 にこだわり続けた理由です。この EB-1 ベースと レスポール・ジュニアのサウンドを組み合わせたことが パッパラルディの大発見であり、腹の底にまで響き渡るような MOUNTAIN サウンドの秘密とされています。
MOUNTAIN は 1972年の解散までに5枚のアルバムを発表しています。3作目の Nantucket Sleighride がMOUNTAIN の代表作と言われていますが、このバンドもライブがすべてであることを考えると 29分にも及ぶ ライブを含む4枚目の Flowers of Evil / 悪の華 を 代表作として薦めたいと思います。このライブでの ハーモニクスを駆使したギターソロから Rollover Beethoven, Dreams Milk & Honey へと続く展開は最高にすばらしく、この中での レスリー・ウエストとフェリックス・パッパラルディのギター・ベース バトルはロック史に残る程の圧巻で これを聴かずしてハードロックは語れないと思われます。

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ギブソン・レスポール・ジュニア

写真は レスリー・ウエスト愛用のギターである1954年製 ギブソン・レスポール・ジュニア

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ギブソンEB-1

写真は ベースのフェリックス・パッパラルディがその独特のサウンドにこだわり続けたギブソンEB-1