メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)とは

関節リウマチ治療のアンカードラッグ(標準薬剤)として位置づけられているメトトレキサート(MTX)が 1999 年に日本で認可されてからやがて 20 年になりますが、MTX 服用中にリンパ腫を含めたリンパ増殖性疾患(MTX 関連リンパ増殖性疾患:MTX-LPD)がときに発症することが近年報告され、一部は死亡に至る重篤な合併症として認識されています。
MTX-LPD は MTXの休薬により約 30 %が1か月以内に症状の寛解を得るのが特徴です。MTX-LPD の既往を持つ関節リウマチの患者さんは MTX の再使用ができないので、治療薬の選択はリウマチ医にとって今後の重要な課題です。

関節リウマチ(RA)患者は一般人口に比較して 2~4 倍の頻度でリンパ腫の合併が多いことが知られています。近年、RA治療のアンカードラッグ(中心的薬剤)として位置づけられているメトトレキサ ート(MTX)投与中にリンパ腫を含めたリンパ増殖性疾患(MTX 関連リンパ増殖性疾患:MTX-LPD)がときに発症するという報告があり、一部は死亡に至る重篤な合併症として認識されています。
リンパ増殖性疾患(LPD)には 腫瘍性疾患(悪性リンパ腫)、非腫瘍性疾患(反応性過形成)、境界領域病変がありますが、臨床的に問題になるのは悪性リンパ腫です。診断は病変部位の生検(組織をとって調べる)で確定します。

(日本における患者背景)
日本でのMTX-LPDの報告では 診断時年齢は中央値 67 (34-87) 歳、男女比約 1 : 2 、RA 発症から LPD 発症までの期間は平均 11 年、MTX 投与期間は約 5 年でした。

(臨床像)
MTX-LPD と診断された半数はリンパ節の腫大で見つかりますが、半数はリンパ節外である消化管・皮膚・肺・唾液腺・甲状腺・扁桃・鼻腔の病変として見つかっており、通常のリンパ腫に比べて MTX 服用中の LPD はリンパ節以外の病変が多いのが特徴です。
患者さんは頸部や腋窩などにリンパ節の腫脹を見つけた際に、すぐ 受診していただくのが早期発見につながります。
組織型はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBL)が 35-60 %と最も多く、次にホジキンリンパ腫が 12-25 %となっています。
メトトレキサート(MTX)の投与期間、投与量と発症の因果関係は証明されていませんが、特徴的なのは MTX の休薬に伴って約 30 % に症状の寛解が見られることです。しかし約 50 % は寛解後に再燃するといわれています

(治療)
MTX-LPD の治療は疑われる症状出現後、ただちに MTX を中止し 2 週間の経過観察を行うことが治療の第一選択とされています。病変の退縮を認める場合は追加治療を行わずに慎重に経過観察をします。MTX の中止のみで寛解に至らなければ組織生検で診断を確定した後、組織型に応じた化学療法が必要となります。
MTX-LPD 寛解後の関節リウマチの治療は 日本リウマチ学会の「2016年 MTX 診療ガイドライン」によると「免疫抑制作用を持つ薬剤を極力避け、MTX の再使用や TNF 阻害作用を持つ生物製剤の使用は再発のリスクを考慮し原則行わない」となっています。このため治療薬の選択はリウマチ医にとって今後の重要な課題です。

(2017.10.05)