新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の日本での発売日が2013年7月30日に決まりました

新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の発売は関節リウマチの患者さんにとって治療薬の選択肢が1つ増えたという朗報ですが、現状では長期の使用成績がないので副作用という点で不安があり、慎重な投与・経過観察が必要な薬剤とされています

2013年2月18日のTopicsで新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の発売前情報をお伝えしましたが、日本での発売が 2013年7月30日に決定しました。一番気になっていた薬価ですが、予想通り高く、1錠 2,539円で1日の使用量が2錠なので1日薬価は 5,078円、さらに 1ヶ月分の薬価は152,340円と高額になり生物学的製剤とほぼ同じ額となりました。

これまで抗リウマチ剤に関しては 日本での発売は海外よりかなり遅く、「関節リウマチの治療の根幹をなす薬剤」とされているメトトレキサート(MTX、リウマトレックス®カプセル、メトトレキサート錠®)が11年, 日本初の生物学的製剤 インフリキシマブ(レミケード®)は5年アメリカに遅れての発売でした。

ところが 発売が遅れるということは問題も大きいのですが、その反面 長期にわたる副作用の情報も蓄積されて 安全な使用に役立つというメリットもあるのです。
しかし今回のトファシチニブ(ゼルヤンツ®)に関しては 海外とほぼ同時期の発売のため 長期に使用した場合の副作用に関するデータがありません。

この様な点を懸念した日本リウマチ学会の宮坂信之理事長は、抗リウマチ剤のトファシチニブ(ゼルヤンツ®)が3月25日に製造販売承認を得たことを受け、声明を発表しました。学会は、本剤による重篤感染症や発癌のリスクを懸念しており、適正使用がなされるかどうか、厳しくモニタリングしていく考えを表明しています。

トファシチニブに関しては、米国食品薬品局(FDA)も「用量依存的な重篤感染症、長期暴露時の発癌、免疫抑制に伴うリンパ増殖性疾患のリスクがある」と注意を促しています。学会が懸念しているのは、「安全性に問題のある薬剤を、米国よりも広い適用、同量で承認すること」「経口薬で処方しやすく、使用施設や医師の限定が難しいこと」「従来の市販後全例調査と同じ方法では発癌リスクが評価しづらいこと」などの点で 2月20日付けで製造販売会社のファイザーに慎重な対応を求める要望書を提出していました。

この要望に対してファイザーは、学会の主な懸念4点につきどう対応するかを詳細に説明した文書を3月14日付けで返信しています。その内容は 他の抗リウマチ薬にはない「メトトレキサート®をはじめとする少なくとも1剤による適切な治療でも症状が残る場合」という条件を設定し、さらに、添付文書の警告欄に「重篤な感染症や発癌が発現し、致死的な転帰に至った症例がある」と記載することになりました。全例調査期間の処方は日本リウマチ学会専門医などに限定し、流通管理品目として納入制限を行う考えも明らかにしました。また、全例調査は4000人を対象に3年にわたり実施。2000人の対象群を設けて比較調査を行い、投与中止例についても3年間の追跡調査を行うというものです。
(2013.07.16)