関節リウマチ診療における超音波検査(関節エコー)の有用性について

関節超音波検査は、既存の関節リウマチの評価法の弱点を補完し、より早期の診断、より正確な病態の評価を可能とすることが期待されます

近年 関節リウマチ(RA) の治療は劇的に変化し、画像診断法も大きく変化しました。関節破壊の進行を阻止する手段が乏しかった時代はレントゲン写真を用いて 既に関節破壊をきたした RA を診断し、進行を確認するのみでしたが、MRI 検査や超音波検査が活用されるようになった結果、より早期の診断、そしてより正確な活動性評価に必要な情報を画像所見から得ることが可能となりました。なかでも超音波検査は 外来でも簡便に行うことが可能で欧州はもとより日本でも急速に広まりつつある臨床診断技術です。

超音波検査の有用性

① 関節リウマチの早期診断ならびに他の疾患との鑑別

最近の研究で RA は発症から 2 年以内の早期にメトトレキサート(MTX) を基本薬とし、必要に応じて生物学的製剤を用いることにより30~50 % の人に臨床的寛解(RAによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態)が得られることが明らかになり、早期診断の重要性が強調されるようになりました。このためアメリカリウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)の新RA診断基準が 2010 年に発表されました(2010.10.12 の項 参照)。その中でも症状のある関節の評価手段として医師の診察手技による関節所見に加えて超音波検査および MRI があげられています。

超音波検査は医師による診察手技と比べて滑膜炎(関節の炎症)の検出に優れており、また骨びらんの検出においてもレントゲン写真より検出感度が高いため、より早期に RAの診断を可能とする場合があります。さらに超音波検査は他の疾患との鑑別にも有用とされています。

② 正確な 関節リウマチの活動性の評価

現在 RA の疾患活動性評価には主に DAS 28, SDAI, CDAI が用いられています(2011.05.07 の項 参照)。これらは 関節所見(痛み・腫れ)、赤沈値(CRP)、患者および医師の全般評価を組み合わせたものですが、医師や患者の主観的判断に依存する項目が含まれているために「活動性の評価」の再現性に問題があり、客観性に乏しいという指摘があります。

現実に 実際の診療においては関節所見の不明確な症例、あるいは症状・関節所見・検査所見の間に大きな解離(ひらき)の見られる症例が少なからずあり、治療方針に迷うことも多くあります。

また RA は臨床的寛解に至った後にも局所の関節において炎症が残存し、これにより関節破壊が進行することが明らかになりました。

超音波検査は RA の病態の中心である滑膜炎を直接見ることが可能で、その活動性の客観的な判断にも有用であるとされています。すなわち診察手技ではとらえられないような潜在性の滑膜炎を見つけて 適切な治療を行うことも可能となっています。

③患者本人の病態に対する理解度 および 患者―医師間の信頼関係の向上

超音波検査は医師と共に関節の画像を見ながらリアルタイムで説明を受けることが可能であるので 患者本人の病態に対する理解度が向上し、さらには 患者―医師間の信頼関係の構築にもつながります。そして病状に対して共通の認識を持つことにより 治療の導入、変更がスムーズに行えるという利点もあります。

(2012.08.02)

※写真は東京女子医科大学付属膠原病リウマチ痛風センターホームページより引用