LIVE CREAM VOL.1 & VOL.2 ( CREAM )

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LIVE CREAM VOL.1 (CREAM) / 1970年発売

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LIVE CREAM VOL.2 (CREAM) / 1972年発売

ロックバンドにとって最小単位のメンバー構成は「 3 ピース 」であると言われています。その 3 ピースとは ドラム、ギター、ベース、または ギターではなく キーボードである場合もあります。そして その内の誰かが ヴォーカルをとるという構成です。そんな 3 ピースバンドの中でも先駆けと言われ、最も有名なバンドの一つが CREAM でした。

CREAM は ギターの エリック・クラプトン、ベースのジャック・ブルース、ドラムのジンジャー・ベーカーの3人で構成され、活動期間 1966年から1968年の2年間でオリジナルアルバム4枚、ライブアルバム3枚を残しました。ブルースとハードロック、サイケデリックロックを融合させたサウンドが特徴で、解散して40年以上経つというにもかかわらず、いまだに伝説のバンドとかスーパーグループという最高の賛辞を表す言葉は後を絶ちません。

エリック・クラプトンは 1965年にヤードバーズを脱退し、ジョンメイオール・ブルースブレイカーズに参加しました。この頃からロンドンの街中に「CLAPTON IS GOD」の落書きが現れ、「ギターの神」と呼ばれるぐらいの腕前と評価されていました。クラプトンは70年代以降、ギターは ほとんどフェンダー・ストラトキャスターを使っていますが、ブルース・ブレーカーズ時代に 60年後半から70年代ロックの基本的な音である distortion sound ( ディストーション・サウンド ― 歪んだ音 ) を ギブソン・レスポールとマーシャルアンプ( 真空管アンプです。なぜか真空管アンプでないと うまく歪まない )の組み合わせで完成させたことでも有名です。また ジミ・ヘンドリックスと共に ワウ( ギターの音色をコントロールするペダル式エフェクターの一種 )を取り入れ、当時の音楽シーンに多大な影響を与えました。

ジャック・ブルースは ポール・マッカートニー( THE BEATLES )、ジョン・エントウィッスル( THE WHO )、ジョン・ポール・ジョーンズ( LED ZEPPELIN ) と共に近代ベース奏法を確立した1人とされています。王立スコットランド音楽演劇アカデミー出身のチェロ奏者から ベーシストへの転身です。ハムバッカーピックアップ( フェンダーのシングルコイルピックアップより歪んだ音が出しやすい )のギブソンEB-3ベースと マーシャルアンプの組み合わせという 当時のベーシストとしては異様とも言える組み合わせで、 distortion を強力に効かせて、大音量で リズム楽器というより ギターの様に弾きまくったのです。まだ ベースの音を歪ませたり、ソロギターと同等の音量でベースを弾くことは非常識とされた時代に この様な個性的なことをやったベーシストは他には あまりいません。ジャック・ブルースとドラムのジンジャー・ベーカーはグループ結成前から あまり仲が良くなかったのですが、結成後もジャック・ブルースのベースの音がうるさいということで争いが絶えなかった様です。

ジンジャー・ベーカーは ジャズ出身のドラマーで エリックやジャックの長い即興プレイにもついてゆくことのできる強靭な精神力と肉体を兼ね備えた持久力 No.1ドラマーと評価されています。LED ZEPPELIN のボンゾの様な破壊力はありませんが、テクニック的には ずば抜けており、後世のロックドラマーに多大な影響を与えました。THE WHO のキース・ムーンと共に 2つのバスドラムを使用したパイオニアです。

この個性的な3人が繰り広げる大音量で 延々と続く improvisation ( 即興演奏 ) が CREAM の特徴であり、かつ魅力です。しかし 彼らの improvisation は起承転結がはっきりしており、延々と続いても不自然な感じが全くありません。これが彼らのすばらしさであり、それまでのバンドやロックと言うものの概念をことごとく打ち破り、後続のバンドである LED ZEPPELIN や DEEP PURPLE などに多大な影響を与えました。
CREAM は improvisation を特徴とするライブが魅力のバンドですので スタジオで録音されたアルバムよりも LIVE CREAM VOL.1,VOL.2 を薦めます。この2枚を聴いていると かつて 誰かが 「あいつらは楽器で戦争をしている」と言ったというのが 実に的を得た表現だと思われます。VOL.1, 2 は どれも名曲ばかりですが、中でも Sunshine of Your Love と Crossroads は人気投票でも常に上位にランクされるロックの歴史に残る名曲です。しかし、この様な緊張感の強い improvisation をいつもやっていたので 精神的に疲労しきってしまい、さらにメンバー同士のエゴの張り合いも続いたので たった2年で解散に追い込まれてしまったと言われています。
わずか2年間の活動期間でしたが 現在にまで通用するロックの基本スタイルを確立し、その後の多くのバンドに影響を与えた功績は大きいと思います。

解散コンサートが行われたロンドンの ロイヤル・アルバート・ホールで 2005年5月、37年ぶりに CREAM の再結成コンサートが行われました。60-70年代に活躍したロックグループの再結成コンサートは時にありますが、メンバーがすでに亡くなっていたりして なかなかオリジナルメンバーで復活するというのは 困難です。CREAM の再結成はあり得ないと 思われていただけに オリジナルメンバーで再結成されるということが発表された時には 信じられませんでした。( 再結成の前、ジャック・ブルースは肝臓がんで 肝臓移植を受けたそうです )

私が CREAM を初めて見たのは 1972年の NHK のヤング・ミュージック・ショーと言う番組でした。当時のNHK がこの様な洋楽のロックの特集を組むというのは お堅い NHK の体質からすると画期的なことでした。内容はロイヤル・アルバート・ホールでの解散コンサートだったと思います。今なら DVD で見ることが出来ます。初めて見た CREAM で一番驚いたのは ジャック・ブルースのベースでした。まるでギターの様にギブソンEB-3ベースを弾いていました。この時から現在まで ジャック・ブルースは 私の最も好きなロックベースプレイヤーの一人となりました。


NHKヤング・ミュージック・ショー放映リスト
1971/10~1979/3
1971/10/24 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(ライヴ&ドキュメント)
1972/07/05 ローリング・ストーンズ(69/7/5ロンドン・ハイド・パーク)
1972/05/07 クリーム(68/11/26ロイヤル・アルバート・ホール)
1972/08/25 スーパーショウ(69/3ステーヴン・スティルス、バディ・ガイ、レッド・ツェッペリン、エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、MJQ、ローランド・カーク他)
1972/10/08 エマーソン・レイク&パーマー 1973/03/17 ピンク・フロイド(71/10ライブ・アット・ポンペイ)