関節リウマチに対してメトトレキサート(MTX、リウマトレックスカプセル®、メトトレキサート錠®)が 週16mg まで増量投与が可能となり、第一選択薬として処方できるようになりました

関節リウマチの新診断基準MTXを週16mgまで増量することが認められ、やっと世界標準の治療ができるようになりました

MTX(メトトレキサート)は最も有効性の高い抗リウマチ薬で、関節リウマチ(RA)の関節破壊の抑制や遅延に対する効果について世界的にエビデンス(臨床研究に基づく実証の報告)が示されています。また効果が用量依存的(投与量が増えるに従い効果も上がる)であることも確認されています。MTXはアメリカでは 1988年に発売されていますが、日本では10年以上遅れて1999年に発売されました。

2010年に発表されたアメリカリウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)合同の新RA診断基準(Topics, 2010.10.12の項を参照)は、早期にRAと診断した患者にMTXを使用し、関節破壊を阻止することを目的としたものです。

RAの診断の確立した症例において寛解の達成および骨破壊抑制の観点から、現在のところ、最も効果の期待できる治療は MTX + 生物学的製剤 の併用療法であることがわかっています。しかし、初期治療より生物学的製剤(Topics, 2010.10.15の項を参照)を用いることは患者さんに大きな経済的負担を強いるばかりか、過剰医療の可能性、医療経済の観点などからも勧められません。

2007年の日本リウマチ学会の改訂ガイドラインでもMTXを中心とした抗リウマチ剤の効果不十分例が生物学的製剤の適応とされています。ところが日本においては欧米に比べてMTXの使用量が制限される状況が長年の問題となっていました。欧米での成人用量上限は週25mg なのに対して、日本では週8mg が上限となっていました。また添付文書上はRAの第一選択薬とすることも認められていませんでした。この様な状況は「MTXはRA治療の根幹をなす薬剤」という世界のRA治療の常識から大きくかけ離れたものでした。この状況の打開のため日本リウマチ学会は過去のMTX使用のデーターの詳細な解析を行いました。その結果、MTXを週16mgまで増量するとRA治療に対する有効性は用量が増すにつれて向上しますが、副作用には有意な変化はないという結論に達しました。この結果を基にMTXの週16mgまでの増量投与を厚生労働省に申請し、2011年2月23日、RAの治療においてMTXの使用が週16mgまで承認され、しかも必要に応じて第一選択薬としての使用も可能になりました

これで日本のリウマチ診療もようやく世界に比肩することができるようになりました。
(2011.02.23)