Topics -トピックス-

関節リウマチ患者さんの肺炎球菌ワクチン接種について

生物学的製剤の投与を受けている関節リウマチの患者さんは 重症の細菌性肺炎にかかることがあるので 是非、接種を受けておくべきです

(1)肺炎球菌ワクチンとは

日本人の死因の4番目が(細菌性)肺炎です。高齢者を中心に肺炎で亡くなる人は年間8万人に達します。
中でも、高齢者の重症市中肺炎(一般家庭で暮らす人の肺炎を市中肺炎という)の約 50%、院内肺炎(入院中の患者さんがかかる肺炎のこと)の約 10%が肺炎球菌によるとされています。
「肺炎球菌ワクチン」は、高齢者の肺炎の原因となる病原体の中で 最も頻度の高い「肺炎球菌」という細菌を狙った予防ワクチンです。もちろん、肺炎球菌以外の微生物による肺炎の予防効果はありません。したがって「肺炎球菌ワクチン」はすべての肺炎に有効ということではありません。しかし このワクチンには 肺炎予防効果と共に肺炎になっても軽症ですむ効果や抗生物質が効きやすいなどの効果が見られます。
つまり、近年、ペニシリンなどの抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加し、30~50 %にもおよぶといわれていますが、肺炎球菌ワクチンはこの様な耐性菌にも効果が見られるのです。さらに インフルエンザにかかった高齢者の 1/4 が細菌性肺炎になるとも言われていることから、インフルエンザワクチンとの併用が望ましいとされています。
現在 日本では ニューモバックスRという製品が販売されていますが、残念ながら まだ健康保険の適応にはなっていません。最近、日本感染症学会で老人施設の高齢者 1000 人を対象とした 3 年間の研究結果が発表されました。それによるとワクチン接種者は未接種者に比べて(細菌性)肺炎の発症率が45 %少なく、肺炎球菌性肺炎が 63 %少ないことがわかりました。さらに驚くべきことは 未接種者で肺炎球菌性肺炎を発症した 37 人のうち 13 人( 35.1 % )が死亡したのに対し、ワクチン接種者では死亡者がいなかったということです。
「肺炎球菌ワクチン」の効果は 5 年とされています。日本では 再接種が許可されていませんでしたが、2009 年から 65 歳以上の高齢者、免液不全のある人、免液抑制剤の投与を受けている人などに対して 初回接種から 5 年以上経った場合に認められました。

(2)関節リウマチ患者さんの細菌性肺炎予防対策としての「肺炎球菌ワクチン」接種

関節リウマチの患者さんは 治療薬として ステロイドホルモン、メトトレキサート( MTX )、さらには生物学的製剤など 感染症に対する免液応答を抑える薬剤を投与されている場合が多くあり、このため呼吸器感染症をこじらせて 肺炎を起こし 寿命を縮めてしまうことがあります。特に 生物学的製剤は 最近、多く使われる傾向にありますが 強力な免液抑制作用を持つため 重症の細菌性肺炎を完全に避けることは難しく、慎重な投与が必要です。
免液抑制作用を持つ治療薬の投与を受けている関節リウマチ患者さんの細菌性肺炎予防対策としては

(1) カゼの予防に努める(マスク、手洗い、冬場は人ごみの中に出かけない)
(2) カゼをひいた場合は メトトレキサートや生物学的製剤の使用を一時中止あるいは延期する
(3) 高熱や濃厚な色の痰が続く場合は すぐ主治医の診察を受ける
(4) 禁煙(喫煙は肺炎の危険を 4 倍増加させるという報告あり)
(5) ワクチンの接種(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン)を受ける

などがあり、これらを実行することで感染症の危険を少しでも減らすことが重要です。
(2011.12.13)

これから出てくると思われる生物学的製剤以外の 新しい抗リウマチ剤について

生物学的製剤は RA 治療に革命的変化をもたらしたが、高価格が一番の問題。これから出てくると思われる JAK 阻害剤に期待

関節リウマチ(RA) の治療は、かつては日常生活における痛みのコントロールが中心でしたが、近年 目標達成(臨床的寛解-RAによる痛み・腫れがなく炎症所見がない状態)に向けた治療法( Treat to Target, T2T ) による治療戦略が必要とされ、T2T で RA の長期予後が改善することが明らかになって来ました( 2011.05.07 の Topics 参照 )。

治療目標達成のためには 関節破壊がおこる前の発症早期から メトトレキサート( MTX )を基本薬とし、必要に応じて 生物学的製剤を用いることが重要とされています。特に MTX は他の抗リウマチ薬と比べて有効性と副作用に対する忍容性(たとえ副作用があっても十分に耐えうることができる程度のこと)が圧倒的に高く、発症早期からリウマチ専門医が第1選択に使用すべきアンカードラッグ(中心的薬剤)と位置付けられています。しかし、MTX のみでは RA の滑膜炎や骨破壊の抑制が困難な症例も少なくなく、これらに関与する TNF や IL-6 といったサイトカインを標的とした生物学的製剤 ( 2010.12.12 の Topics 参照 )が導入されました。生物学的製剤は著明な治療効果を示し、RA 治療に革命とも言える変化をもたらしました。MTX と生物学的製剤を発症早期(2年以内)から併用すれば、30~50 % に臨床的寛解が得られることが明らかになりました。
しかし この生物学的製剤にも問題点があります。約 30 % の症例は TNF 阻害療法に抵抗性であり、投与法が注射(静脈、皮下注射)であることに加えて 最大の問題点は その高価格による経済的負担増にあります。生物学的製剤の使用は保険診療で行っても 現在の医療費の支払に加えて、さらに 年間 約45~50 万円の患者さんの自己負担増となります。ですから いくら「RA の発症早期から MTX と生物学的製剤による治療を行えば 寛解も夢ではなくなった」と言われても 誰もが無条件にすぐに受けられる治療ではありません。現に 生物学的製剤を投与されている方は 身体障害者手帳の1級、2級をもっていてすでに医療費の公的支援を受けている方がかなりの割合を占めています。

では 生物学的製剤が 日本だけで特別に高いかというと 決してそうではありません。抗 TNF-α製剤である レミケードRを 例にとって調べてみますと 英国と日本は ほぼ同じ価格で ドイツは 日本よりやや高い価格となっています。アメリカは 日本よりやや安くなっています。他の生物学的製剤も同じ傾向と思われます。この様な状況ですので 将来の大きな薬価の引き下げもあまり期待できません。しかも 福島原発の後始末や震災・津波被害からの復興費用に 23 兆円かかるという試算もあり、その財源のあても全く確保されてない現在、医療費の公的支援の増額などとても期待できません。

経済的な問題で ごく一部の人にしか生物学的製剤を使用できず、発症早期の必要な人すべてに自由に使用することができない様なら、「寛解導入が可能になった」という言葉も あまり現実味を持ちません。

この様な RA 治療の現況において 最近 サイトカインが細胞内で活性化して その生物活性を表すのに必要な Janus Kinase ( JAK ) を阻害する薬剤が注目されています。現在、複数の JAK 阻害剤が臨床試験段階にありますが、その効果発現は 投与開始後 数週からみられ、MTX 併用の有無にかかわらず、約 30 % の症例で寛解達成が可能であることが、複数の臨床試験で明らかになっています。この薬剤は 合成過程から低価格であることが予測され、しかも経口投与(飲み薬)なので 生物学的製剤が抱える種々の問題を解決可能な 新しい 抗リウマチ薬となることが期待されています。
(2011.09.12)

関節リウマチの治療目標とは

治療目標 ( 関節リウマチによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態である臨床的寛解の達成 が目標 ) を明確にし、目標達成に向けた治療法 ( Treat to Target, T2T ) を行うことが重要

糖尿病や高血圧は慢性疾患であり、コントロールを十分に行わないと重篤な合併症の併発や身体障害になる恐れがあり、その結果、生命予後が悪化する可能性のある疾患です。そのため、これらの疾患では 治療目標を明確にし、目標達成に向けた治療法 ( Treat to Target, T2T ) が提唱されています。これらの慢性疾患では、T2T の概念を用いた厳密な管理により 長期の予後が改善することが すでに明らかになっています( 糖尿病では ヘモグロビンA1c が 7 % 未満; 高血圧では血圧 140/90 、心血管系の合併症の発生率を低下させるため LDL コレステロール値 70 mg/dl、が治療目標 )。

これらのことから 近年、関節リウマチ (RA) においても目標達成に向けた治療法(T2T) による治療戦略が求められており、実際に多くの論文報告でも T2T で RA の長期の予後が改善することが示されていました。
2009年の欧州リウマチ学会 ( EULAR ) による RA 治療の勧告によると 関節リウマチの治療目標は すべての患者において 早期 RA では 「寛解」、もしくは 罹病期間の長い RA では「低疾患活動性」にすべき とされました。そして、その治療目標が達成されるまでは 1~3ヶ月毎に疾患活動性の評価を行い、薬物治療法を見直します。その結果、目標が達成されれば、維持療法を行い、3~6ヶ月毎に疾患活動性を評価し、再燃すれば薬物治療法を変更し、寛解あるいは低疾患活動性を維持してゆきます。

20110506-01「寛解」や「低疾患活動性」を治療目標とするのは 様々なデーターの解析で関節破壊の進行は 低疾患活動性 さらには 寛解の達成によって 最も抑えられることが示されたからです。しかし「寛解」の基準として万人が認めるものは まだ存在しません。現時点では RA の活動性(勢い)がない状態、つまり 痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態とされ、臨床的寛解と言われています。その評価には 後述する DAS28, SDAI, CDAI 基準が使用されています。

また アメリカリウマチ学会 ( ACR ) と 欧州リウマチ学会 ( EULAR ) も合同で 2010 年に 2 通りの RA の暫定的な寛解基準案を発表しています(右表)。

RA の疾患活動性を評価する方法として 最近では DAS28, SDAI, CDAI などの評価方法が利用されています。それぞれ 四肢 28 関節の圧痛関節数、腫脹関節数、赤沈値や CRP値、患者や医師の全般改善度 ( VAS ) により計算され、高疾患活動性、中等度疾患活動性、「低疾患活動性」、そして「寛解」と分類評価されます(下表)。

20110506-2

治療目標達成のためには、
関節破壊がおこる前の早期診断 (2010年 ACR/EULAR RAの新診断基準 - 2010.10.12 Topics 参照) と メトトレキサート( MTX )を基本薬とし、
必要に応じて生物学的製剤 ( 抗サイトカイン療法 - 2010.10.15 Topics 参照 ) を用いる早期治療 で、十分な疾患管理を行うことが重要です

(2011.05.07)

関節リウマチに対してメトトレキサート(MTX、リウマトレックスカプセル®、メトトレキサート錠®)が 週16mg まで増量投与が可能となり、第一選択薬として処方できるようになりました

関節リウマチの新診断基準MTXを週16mgまで増量することが認められ、やっと世界標準の治療ができるようになりました

MTX(メトトレキサート)は最も有効性の高い抗リウマチ薬で、関節リウマチ(RA)の関節破壊の抑制や遅延に対する効果について世界的にエビデンス(臨床研究に基づく実証の報告)が示されています。また効果が用量依存的(投与量が増えるに従い効果も上がる)であることも確認されています。MTXはアメリカでは 1988年に発売されていますが、日本では10年以上遅れて1999年に発売されました。

2010年に発表されたアメリカリウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)合同の新RA診断基準(Topics, 2010.10.12の項を参照)は、早期にRAと診断した患者にMTXを使用し、関節破壊を阻止することを目的としたものです。

RAの診断の確立した症例において寛解の達成および骨破壊抑制の観点から、現在のところ、最も効果の期待できる治療は MTX + 生物学的製剤 の併用療法であることがわかっています。しかし、初期治療より生物学的製剤(Topics, 2010.10.15の項を参照)を用いることは患者さんに大きな経済的負担を強いるばかりか、過剰医療の可能性、医療経済の観点などからも勧められません。

2007年の日本リウマチ学会の改訂ガイドラインでもMTXを中心とした抗リウマチ剤の効果不十分例が生物学的製剤の適応とされています。ところが日本においては欧米に比べてMTXの使用量が制限される状況が長年の問題となっていました。欧米での成人用量上限は週25mg なのに対して、日本では週8mg が上限となっていました。また添付文書上はRAの第一選択薬とすることも認められていませんでした。この様な状況は「MTXはRA治療の根幹をなす薬剤」という世界のRA治療の常識から大きくかけ離れたものでした。この状況の打開のため日本リウマチ学会は過去のMTX使用のデーターの詳細な解析を行いました。その結果、MTXを週16mgまで増量するとRA治療に対する有効性は用量が増すにつれて向上しますが、副作用には有意な変化はないという結論に達しました。この結果を基にMTXの週16mgまでの増量投与を厚生労働省に申請し、2011年2月23日、RAの治療においてMTXの使用が週16mgまで承認され、しかも必要に応じて第一選択薬としての使用も可能になりました

これで日本のリウマチ診療もようやく世界に比肩することができるようになりました。
(2011.02.23)

関節リウマチと喫煙との関係について

だんだん明らかになってきた喫煙と関節リウマチの関係

タバコの煙にはニコン、一酸化炭素、タールが含まれるのみならず、タールの中には数十種類にも及ぶ発がん物質が含まれています。このため喫煙することにより循環器系、呼吸器系などに対して血圧上昇、心拍数増加、咳・痰、息切れといった急性影響が見られます。また喫煙者では肺がんをはじめとする種々のがん、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患、慢性気管支炎・肺気腫などの閉塞性肺疾患、胃・十二指腸潰瘍などの消化器疾患、その他種々の疾患のリスクが増大することが知られています。
最近、喫煙と関節リウマチとの関係がだんだん明らかになってきました。

(1)関節リウマチの発症に対する喫煙の影響

関節リウマチ発症率に関し、喫煙群は非喫煙群の1.4~2.5倍高く、さらに男性の喫煙群では4倍高いという報告があります。そして40年以上の喫煙歴を持つ人では、13.5倍にもなります。 またある特殊な遺伝子を持つ喫煙者は この遺伝子を持たない非喫煙者に比べて 関節リウマチの発症率が 21 倍もあることが最近の研究で明らかになっています。

(2)関節リウマチの経過に対する喫煙の影響

喫煙者は非喫煙者に比べてリウマチ因子(RF)の陽性率が高くかつ高値を示し、特に男性でこの傾向が強いことがわかっています。また喫煙者ではレントゲンで関節破壊の程度が強いという報告があります。逆に禁煙することにより 関節リウマチの症状が軽快することも明らかになっています。

(3)関節リウマチの合併症に対する喫煙の影響

関節リウマチの患者さんはそうでない人に比べて心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患の発症率が高いことがわかっていますが、喫煙は動脈硬化を促進することによりこれらの疾患の発症に悪影響を及ぼすことが考えられます。また関節リウマチに見られる肺病変(2010.12.27)の項で述べたように関節リウマチは間質性肺炎や気管支拡張症を合併することが知られていますが、喫煙はこれらの合併症の発症や症状の悪化に密接に関連することがわかっています。

以上のように、喫煙は関節リウマチの発症と関連があり、その経過、合併症に対して悪影響を及ぼしますので避けるべきです

(2011.02.14)

関節リウマチに見られる肺病変について

咳や痰が長く続く時には、早期に主治医に相談を

関節リウマチは主に関節が侵される疾患ですが、全身性にも炎症性の多臓器障害を起こすことがあります。中でも、肺は最も代表的な障害臓器で 肺が侵されると患者さんの将来の生活に大きな悪影響を及ぼすことになります。
関節リウマチ(以下 RAと略)に見られる肺病変は、大きく分けて、次の3つとなります。

(1) 関節外症状としての肺病変(RAによって引きおこされる)
(2) RAの治療薬剤によっておこる薬剤性肺障害
(3) 呼吸器感染症

(1) 関節外症状としての肺病変

(a) 間質性肺炎:RAにおこってくる肺の病変で最も多いものです。CT検査では RA患者さんの 20-50 % に見られると言われています。肺は肺胞と呼ばれる空気の袋がたくさん集まってできていますが、この肺胞どうしを つなぎ止めている部分が間質です。肺は伸びやすく弾力性がありますが、間質の部分が厚くなると 肺は伸びにくくなり 呼吸しづらくなります。これが間質性肺炎と呼ばれるものです。一度このような状態になるとほとんど元に戻ることはありませんが、大多数の人では進行しないか、進行は緩やかです。しかし、一部には呼吸困難や咳などの症状が急速に進行する例もあります。肺病変の程度と関節炎の進行状態とは必ずしも一致はしません。関節症状が軽くても肺が侵されることがあります。患者さんの多くは無症状ですが、進行した人ではひどい咳や呼吸困難が見られます。
残念ながらこの病変を治す特効薬はありません。しかし、多くの患者さんは症状がないか軽度なので治療適応となることはあまりありません。しかし,呼吸機能の低下が進行する場合や呼吸困難が急速に進行する時は入院が必要でステロイドホルモンの大量投与などが行われますが、効果のないこともあり、まだ治療法は確立されていません。

(b) 気管支拡張症:気管支の一部が拡張し、そこに分泌液がたまって炎症を起こす病気です。症状は長期間持続する咳,痰が主な症状ですが、細菌の感染を伴う場合が多く、膿性の痰や血痰を伴い、さらには喀血を見ることがあります。
最近、RAと気管支拡張症の関連を指摘する報告があり、多くは女性でリウマチ因子(RF)陽性とされています。また、気管支拡張症の増悪によってRA自体の増悪をおこす事があります。
診断はレントゲン、CT、気管支鏡などで行います。
治療は一度壊れた気管支は元には戻りませんが、エリスロマイシンやクラリスロマイシンという抗生物質を長期に使うとある程度症状を安定させることができます。

(2) 薬剤性肺障害(薬剤性間質性肺炎)

間質性肺炎の原因はRAだけでなく、非常に多くの様々な原因があります。本来、病気の治療に使われるはずだった薬によっても間質性肺炎はおこります。抗がん剤、抗生物質、血圧の薬、痛み止め、漢方薬など、ほとんどの種類の薬が間質性肺炎の原因となりうることが報告されています。RA の薬も例外ではありません。RAに使われる薬で原因としてはっきりしている薬は金製剤(シオゾール)、消炎鎮痛剤、ブシラミン(リマチル)などですが、最近では MTX(メトトレキサート)やLEF(レフルノミド)がRAに対して用いられる様になり、この2者は 急性かつ重篤な肺障害がおこるため、十分な注意が必要です。特に MTXは近年RAの標準薬として使用される機会も増えており、MTX肺炎も増加しています。
症状は咳(痰を伴わない)、発熱、労作時の呼吸困難で多くは急性に発症します。診断はレントゲンとCTでまず行いますが、これだけでは同様の所見を認める一部の感染症(カリニ肺炎)との鑑別は困難です。また、RAそのものでも間質性肺炎が起こり得るため、原因の特定は困難なことが多いです。治療は、疑いのある薬を中止すると共にステロイドホルモンの投与を行いますが、MTXが原因の肺炎には一度に大量のステロイドホルモン投与(パルス療法)が有効です。

(3) 呼吸器感染症(肺炎)

肺炎は RAの患者さんの入院理由として最も多く、主要な死因の1つでもあるので注意が必要です。ステロイドホルモンの使用、身体機能の低下、高齢、喫煙の習慣、糖尿病・肺疾患の合併、RAの罹病期間の長さが肺炎発症の危険因子とされています。また、近年導入された生物学的製剤により、重症感染症や日和見感染症(ひよりみかんせんしょう。免疫機能の低下するような薬の投与を受けている人におこる 健康な人には感染しない病原性の弱い微生物である真菌(カビ類)、サイトメガロウイルス、ニューモシスチスカリニなどによる感染症のこと)の増加をきたすことが問題となっています。
ステロイドホルモンや生物学的製剤を投与されている人は 発熱などの症状が出にくいので、診断・治療開始が遅れやすく、十分な注意が必要です。また、危険因子を持っている人は 軽い風邪症状のうちに ただちに主治医に報告して早めに治療を受け、重症化させないことも重要です。危険因子を持っている人や生物学的製剤の投与を受けている人は、インフルエンザの予防接種や肺炎球菌ワクチンの接種を受けておくのがよいでしょう。

以上、RAに見られる肺病変について述べましたが、今後 MTXや生物学的製剤の使用が増加するにつれて、呼吸器感染症と薬剤性間質性肺炎が問題となることが増えると思われます。咳や痰が長く続く時には単に風邪と自己判断して放置せずに 早期に主治医に相談することが重要です。

(2010.12.27)

関節リウマチの ACR/EULAR 新診断基準(2010年)に含まれる 抗CCP抗体 とは

抗CCP抗体は 早期関節リウマチの補助診断に大変重要な検査だが、陰性の場合も 20~30% あるので、診断にあたっては 関節所見や他の血液検査も含めて総合的に判断することが必要

先に述べました(2010.10.12)、ACR/EULAR の関節リウマチの新診断基準(2010年)に含まれる、抗CCP抗体について説明します。

関節リウマチ(RA)の診断は時に難しく、経過を追ってみないと分からないことがあります。今までは 診断のための血液検査としては リウマチ因子(RF)が用いられることがほとんどでした。ところが リウマチ因子は他の膠原病でもしばしば陽性となり、健康な人(特に老人)、慢性感染症、肝臓病などでも時折 陽性となることがあります。また RAでも20-30% の人がずっと陰性ですし、RA発症早期は陰性のことも多い様です。

これまでRAを疑うけれど確定診断がつかない時に この検査をすれば確実に診断がつくという検査はありませんでした。ところが 最近、CCPという物質がRAの関節滑膜に存在していることが判明し、それに対する抗体である抗CCP抗体の血液中の存在の有無を調べることでRAの診断の補助が可能となりました。抗CCP抗体はRAに対して特異性が高いため(他の疾患で陽性になりにくい)、この抗体が高値の人はRAであるか、もしくは将来RAになる確率が非常に高く(約95%の確率)、早期RAの診断が重要視されている現在、補助診断として大変重要な検査となりました。

但し、RAの患者でも約20%は 抗CCP抗体が陰性であり、さらに関節炎の早期であれば後にRAと診断された人の約40%が初期は陰性という報告もあります(やや感度が低い)。ですから RAを疑ってこの検査を行った時、陽性なら95%の確率でRAと言えますが 陰性だからといってRAではないとは言えないので注意が必要です。

この他、抗CCP抗体が陽性のRAは 陰性のRAよりも関節の骨破壊が強く進みやすい(抗体価の高い程、将来 骨破壊が進行しやすい)、抗CCP抗体価が 100以上の場合、治療に MTXだけでなく 生物製剤が必要になることが多いなどの報告もあります。

以上の様に、抗CCP抗体は関節リウマチの診断の補助には 大変重要な検査ですが、その陽性・陰性だけで 安易にRAだ、そうでないを即断しないことが重要と思います。

(2010.12.12)

関節リウマチの治療費にかかわる公的支援について

関節リウマチの治療は長期にわたることから 医療や福祉の面においても さまざまな公的支援がありますが、これらのサービスは患者の皆さまご自身で申請を行わない限り、受けることができないものがほとんどです。この項では公的支援の概要をご紹介したいと思います。

医療費にかかわる公的支援には次の4つがあります。

(1)各種保険制度および医療費控除

同じ病院や診療所で支払った1カ月の医療費自己負担額(外来診療、入院診療ごとにそれぞれ計算)が自己負担限度額を超える場合、限度額を超えて支払った自己負担分を 「高額療養費」として 払い戻しを受けることができます。

詳しくは国民健康保険の場合は 市区町村の国保または国保組合の窓口へ、被用者保険の場合は各事業所(あるいは全国健康保険協会都道府県支部)の窓口へ問い合わせて下さい。

その他、

  • 高額医療、高額介護合算(療養費)制度
  • 高額療養(医療)費貸付制度
  • 医療費控除(確定申告の時)
  • 傷病手当金

などがあります。

(2)特定疾患治療研究事業

悪性関節リウマチは「特定疾患治療研究事業」の対象疾患に指定されていますので 治療にかかった医療費(保険診療分)の自己負担の一部または全額が公費で助成されます。月額の自己負担は、所得に応じて定められた限度額までとなります。医療費の助成を受けるには 所定の手続きを行い、「特定疾患医療受給者証」の交付を受けることが必要です。(一般の「関節リウマチ」の患者様は この事業による医療費の公費助成を受けることはできません。悪性関節リウマチと診断され、所定の手続きを行い 認定された方のみです。)

(3)「身体障害者手帳」の交付を受けられた方が利用できる福祉制

○重度心身障害者医療費助成制度(身体障害者手帳1~2級が対象)

病院などで受診した時の医療費(保険診療分)の自己負担の一部について助成を受けることができます。

○自立支援医療(更生医療)の給付(身体障害者手帳1~6級が対象)

障害の軽減や除去、機能回復を目的とした医療(人工関節手術など)を必要とする場合は、自立支援医療(更生医療)の給付を受けることができます。

○身体障害者手帳などの利用による各種サービス

公的援助サービスには 福祉(ホームヘルパーの派遣、短期入所、日常生活用具給付、車いす、歩行器などの交付、バリアフリー化支援)、手当・年金(特別障害者手当、児童扶養手当、生活福祉資金貸付制度、障害年金)、住宅に関する援助、税の減免、各種割引制度(JR各社・私鉄各社旅客運賃、航空運賃、タクシー料金、携帯電話使用料)、自動車に関する助成制度(身障者用の自動車改造費、身障者運転免許取得費、自動車購入資金貸付、有料道路通行料金割引、駐車禁止除外指定車章の交付)などがありますが、各地域の自治体により条件や内容が異なりますので詳細は各市区町村役場にお問い合わせください。

(4)介護保険制度

40歳以上の関節リウマチの方は認定された支援・介護度に応じて介護サービス、介護予防サービスが受けられるようになります。サービスには在宅で受けることができる「在宅サービス」と住み慣れた地域での生活を支える「地域密着型サービス」、施設に入所して受ける「施設サービス」があります。

在宅の介護サービスには福祉用具の貸与および購入費の支給、住宅改修費の支給、訪問入浴介護、訪問・通所によるリハビリテーションなどがあります。施設での介護サービスには 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などの入所サービスや短期入所(ショートステイ)などがあります。

詳しい手続きは 各市区町村役場にお問い合わせください。

以上の医療・福祉制度などは 平成22年8月のものです。各制度は年度ごとの改定のほか、自治体により詳細が異なることがあります。

(2010.11.05)

関節リウマチに対する抗サイトカイン療法について(生物学的製剤の登場)

関節リウマチに対して メトトレキサート(MTX) が使用可能となり、そして 生物学的製剤が登場したことにより、寛解(関節リウマチによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態である臨床的寛解)が 現実のものとなりました

関節リウマチは、関節の痛みや腫れに悩まされるだけでなく、進行すると関節の変形や破壊にも苦しめられる厄介な病気ですが、従来の薬物療法では病気の勢いを弱めて進行を遅らせる治療しかできませんでした。ところが、最近の研究により、サイトカインというタンパク質が種々の病気を起こしたり、症状の進行と関わったりすることが分かってきました。その中でもTNFやIL-6に代表されるサイトカインは、リウマチの炎症に関わる数多くのサイトカインを誘導し、関節の腫れや骨破壊に直接関係していることが明らかにされました。

そこで登場したのが抗サイトカイン療法です。この療法に用いられる薬剤は、TNFやIL-6の役割に注目して、これらを標的とした抗体やさらにそれらの受容体を標的とした薬剤で、ここ10年近くの間に欧米において相次いで関節リウマチに用いられるようになり、日本でもここ数年の間に使われるようになってきました。これらはリウマチの症状に対してきわめて強力な治療効果を示し、さらには関節破壊を抑える効果もあるところからリウマチの治療そのものの姿を変化させつつあります。最近の知見では、発症早期(2年以内)からの抗サイトカイン療法により、30~50%の症例で、炎症と自他覚症状の消失を意味する臨床的寛解が得られることが分かってきております。薬剤によっては臨床的寛解に突入後、一定条件を満たすことができれば、投与を中止しても臨床的寛解が持続することが確認されています。しかし、日本において、このような抗サイトカイン療法を受ける患者様の多くは、これまでのリウマチ治療剤に対して効果が低い方や、どちらかといえば症状が進行してしまった方に用いるというのが一般的な傾向で、発症早期から用いられることはまだ少ないのが現状です。

しかし、抗サイトカイン療法にも問題点がないわけではありません。

まず、抗サイトカイン療法は保険診療で行なっても、年間50万円近くが患者様の自己負担となります。なぜならば、これらの薬剤は生物学的製剤と言って、最新のバイオテクノロジーを駆使して開発された新しい薬剤であり、その製造過程にかなりの金額がかかるからです。また、感染症や、併用するメトトレキサートの副作用のモニタリングを絶えず行なっていかなければなりませんが、これは抗サイトカイン療法に手馴れた専門の医師の下で行なう必要があるのです。

現在、日本で使用することのできる生物学的製剤は、『インフリキシマブ(レミケード®)』『エタネルセプト(エンブレル®)』『アダリムマブ(ヒュミラ®)』『トシリズマブ(アクテムラ®)』です。さらに、2010年9月から国内で5番目に承認された生物学的製剤である『アバタセプト(オレンシア®)』が使用可能になりました。この薬剤は、サイトカインを産生するリンパ球の中のT細胞の働きを抑え、病気をより根本に近い段階から抑えるので、既存の4種の抗サイトカイン製剤による治療では効果不十分な患者様にも効果が期待されています。

(2010.10.15)

ACR/EULAR の関節リウマチの新診断基準(2010年)について

早期に関節リウマチを診断して治療を開始することにより、寛解を目指します

日本でも広く用いられてきたアメリカリウマチ学会の診断基準が23年ぶりに改定され、アメリカリウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)共通の診断基準となりました。
この改定で、以前の基準と大きく変わった点は、レントゲンの画像所見が消えたこと、対称性の関節炎が消えたことです。つまり、レントゲンで分かるほどの骨の破壊が来るのを待ってはいけない、ひとつの関節の関節炎であっても診断可能になったということです。
世界的にリウマチの標準治療薬となったメトトレキサート ( MTX ) の投与や、さらには、生物学的製剤の投与により早期関節リウマチの寛解 ( 関節リウマチによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態 ) の可能性が出てきている今、関節破壊が起こる前のなるべく早期に専門的な治療を患者さんが受けられることが重要で、そのための診断基準であると考えられます ( 但し、少なくとも1ヶ所の腫れた関節のあることが診断のために必須です ) 。


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①関節炎の数と分布

0点1ヶ所の中~大関節
1点2~10ヶ所の中~大関節
2点1~3ヶ所の小関節
3点4~10ヶ所の小関節
5点>10ヶ所の関節(少なくとも1つは小関節)

②血清

0点抗CCP抗体およびRF陰性
2点抗CCP抗体およびRF低値陽性
3点抗CCP抗体およびRF高値陽性

③関節炎の持続期間

0点6週間未満
1点6週間以上

④急性期反応物質

0点CRP および ESR正常
1点CRP または ESR異常

上記の合計点が10点満点中、6点 以上でRA確定例と診断される。

(2010.10.12)