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関節リウマチの治療と妊娠について

かつては挙児希望の活動性関節リウマチ(RA)の女性は治療と妊娠のどちらを優先するか選択を迫られた時期がありました。 RA の標準治療薬となっているメトトレキサート(MTX)は催奇形性があるため妊娠計画の少なくとも 3 ヶ月前から中止して妊娠および授乳中の使用を避けなければなりません。このため妊娠を計画する時や妊娠・授乳中に関節炎が悪化して関節破壊と機能障害が進行してしまうことがありました。
最近 生物学的製剤(TNF 阻害薬)が普及して それを用いた RA 治療中の妊娠に関するデータが蓄積されつつありますが、流産・先天異常の発生率増加はないことから 投与を継続しながら妊娠を成功に導ける可能性が示されています。 また産後に RA が再燃して育児が困難になったり 次の妊娠をあきらめる患者さんもいます。しかし生物学的製剤(TNF阻害薬)は母乳への分泌も少なく 児毒性も認められていないことから 産後に関節炎が悪化した RA 女性でも有用な治療手段のひとつになりうると考えられています。

関節リウマチ(RA)は妊娠可能な年齢である 30~50 歳の女性に好発する疾患です。日本では第 1 子の平均出産年齢は 30 歳を超えており、今後は RA 発症後に結婚・妊娠を考える女性が増加すると予想されています。近年、 RA の治療は生物学的製剤が登場したことにより格段の進歩をとげました。 T2T という治療戦略で RA の予後も改善しつつあります(2011.05.11 の TOPICS 参照)。ゆえに挙児希望の RA 女性では治療と妊娠・出産の両立が今後ますます重要な課題になると考えられます。

1.関節リウマチが妊娠や児に与える影響

①RA では妊孕性(にんようせい/妊娠する力)が低下

アメリカやデンマークで実施された大規模調査によると RA 女性における妊孕性の低下が明らかになりました。

②RA 女性の妊孕性低下に関連する要因

高疾患活動性(不妊の頻度が寛解の人に比べて約 2 倍)、高用量のステロイド服用、 NSAIDs 服用、個人の選択(妊娠や育児に対する不安から妊娠を制限)が要因として挙げられていますが、喫煙・RA の罹病期間・リウマトイド因子陽性・抗 CCP 抗体陽性、サラゾスルファピリジン使用歴・MTX 使用歴は妊孕性低下と関連ないという結果でした。

③RA が児におよぼす影響

RA では早産・胎児発育遅延の頻度が高いという報告があります。さらにこれは重症の RA やステロイド治療を受けている女性に多いという傾向があります。RA 自体は児の先天異常に関連がありません。

Brouwer,J.,et al.:Fertility in women with rheumatoid arthritis:influence of disease activity and medication. Ann Rheum Dis.15:2014-2053,2014

舟久保ゆう:関節リウマチの治療と妊娠の両立 。 Jpn.J.Clin.Immunol,38(1)45-56,2015

Bowden,A.P.,et al.:Women with inflammatory polyarthritis have babies of lower birth weight. J.Rheumatol.28:355-359,2001

2.妊娠が RA に与える影響

メカニズムはわかっていませんが、 40~90%ぐらいの患者で妊娠中に関節症状が改善し 出産後 40~90%ぐらいの患者で関節症状が悪化していました。

Ostensen,M.,et al.:A prospective study of pregnant patients with rheumatoid arthritis and ankylosing spondylitis using validated clinical instruments. Ann Rheu Dis.63:1212-1217,2004

3.RA 治療薬が妊娠・児におよぼす影響

RA の治療薬として 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)、抗リウマチ薬(DMARD)、 生物学的製剤、ステロイ ドなど多彩な薬剤が使用されることから 妊娠や児におよぼす影響が懸念されます。 薬の児への影響は催奇形性(妊娠初期、 14 週未満) と胎児毒性(妊娠中期以降) とに分けて考えます。 新生児の 100 人に 3 人は生まれながらに異常を持って生まれて来るといわれています。 つまり母親が妊娠中 薬を服用せず、 放射線も浴びず、 病気をしなくても 3%ぐらいは自然に発生するのです。 催奇形性のある薬というのは奇形を起こす頻度が自然の 3%より明らかに高いものを指します。

①NSAID,アセトアミノフェン(カロナール®)

NSAID はプロスタグランディン(PG)の産生を抑制して抗炎症・鎮痛作用を発揮します。 PG は排卵や着床、胎盤形成に関与しているので NSAID 使用によりこれらが阻害される可能性があります。NSAID を妊娠初期に用いると流産のリスクは 5.6 倍に増加し、 1 週以上継続して使用していると 8.1 倍に増加したという報告があります。妊娠後期の 32 週(8 か月)以降は PG 産生抑制により胎児の動脈管早期閉鎖をおこし、胎児死亡や新生児肺高血圧を起こす可能性があるので NSAID 使用は中止するよう推奨されています。アセトアミノフェン(カロナール®)は PG 合成阻害作用がないので妊娠中も比較的安全に使用できると考えられています。

②ステロイド

ステロイドは妊娠初期に使用すると新生児の口蓋裂をきたす危険性が 3~4 倍に増加し、妊娠中後期に使用すると胎児の発育遅延や母親に妊娠高血圧や糖尿病をきたす危険が増すという報告があります。プレドニゾロンは胎盤で不活化されやすいので児に対する影響は少ないと考えられ、妊娠中には胎盤通過性の少ないプレドニゾロンを 使用するのがよいとされています。

③メトトレキサート(MTX)

MTX は RA 治療の標準薬と位置づけられており、患者の多くが服用している薬剤です(2011.02.23 の TOPICS 参照)。
MTX 使用により流産のリスクおよび催奇形性作用があるため 妊娠中は使用禁忌です。日本において RA 女性・男性ともに妊娠計画を避けるべき期間は MTX 投与中および投与終了後 3 ヶ月間とされています。

MTX 以外の DMARDs

  • サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®):これまでの使用報告から児にはほとんど影響がなく、妊娠中も安全に使用できると考えられています。
  • ブシラミン(リマチル®):海外データがなく 日本のデータのみだが、これまで有害事象の報告がないので 妊娠判明までは使用可能とされています。
  • タクロリムス(プログラフ®):胎盤移行性があるので妊婦には使用禁忌となっていましたが、先天異常の発生率増加はなく服用中断で症状悪化の事例もあるため、 2018 年7 月から妊婦への使用が禁忌から外れました。
  • レフルノミド(アラバ®):動物実験で催奇形性が報告され、妊娠中の使用についても安全性が確立していないので 妊娠中の使用は禁忌です。半減期が長い薬剤なので妊娠計画の 2 年前に投与を中止します。

⑤ 生物学的製剤(2010.10.15 の TOPICS 参照)

生物学的製剤の登場により RA 治療は飛躍的な進歩をとげました。妊娠を希望する女性では MTX の使用ができないので、生物学的製剤(ここでは TNF 阻害薬のみです) は挙児希望だがコントロール不良の RA 女性の薬物治療の選択肢となりうると考えられています。
臨床データが極めて少ないですが、妊娠前や妊娠初期の生物学的製剤(TNF 阻害薬)の使用による流産や先天性奇形発生率は非投与妊娠例や一般人口と比較して差がないことが海外の研究で報告されています。生物学的製剤は抗体製剤ですので胎盤通過性があります。エタネルセプト(エンブレル®)、セトリズマブぺゴル(シムジア®) は胎児への移行が極めて少ないことが動物実験および症例報告で示されており、妊娠中にやむを得ず生物製剤を継続する場合はこの両者が比較的安全に使用できると認識されています。 しかし妊娠中の母体を対象とした大規模な介入試験が存在しないので治療の根拠となる研究がありません。これを十分認識したうえでの治療方針決定が重要です。

Cush,J.J.:Biological drug use:US perspectives on indications and monitoring.Ann Rheum Dis.64:iv18-iv23,2005

舟久保ゆう:関節リウマチの治療と妊娠の両立。Jpn.J.Clin.Immunol,38(1)45-56,2015

関節リウマチ診療ガイドライン(一般社団法人日本リウマチ学会編集)2014、p101-102,p195-197

関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016 年改訂版(一般社団法人日本リウマチ学会編集)、p63-65

4.授乳期における RA 治療薬

出産後の RA は疾患活動性が増加することが多く、 薬物治療を継続しながら授乳することができるかが問題となります。
しかし 授乳期 RA 患者に対して有効性・安全性が確立された研究はなく、 倫理的にも今後行うのは困難と思われます。 したがって動物実験や数少ない症例報告から得られたデータから推測するしかありません。
授乳中でも比較的安全に使用できると考えられている薬剤は NSAIDs,プレドニゾロン、 サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)、 タクロリムス(プログラフ®)、 生物学的製剤(TNF 阻害薬) です。
しかしこれらの薬剤も有効性・安全性は確立していないので原則として DMARD と生物学的製剤は中止すべきです。 やむを得ず使用する場合はリスク(副作用) とベネフィット(効きめ) を十分考慮したうえで決定すべきとされています。

(2018.9.8)

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)とは

関節リウマチ治療のアンカードラッグ(中心的薬剤)として位置づけられているメトトレキサート(MTX)が 1999 年に日本で認可されてからやがて 20 年になりますが、MTX 服用中にリンパ腫を含めたリンパ増殖性疾患(MTX 関連リンパ増殖性疾患:MTX-LPD)がときに発症することが近年報告され、一部は死亡に至る重篤な合併症として認識されています。
MTX-LPD は MTXの休薬により約 30 %が1か月以内に症状の寛解を得るのが特徴です。MTX-LPD の既往を持つ関節リウマチの患者さんは MTX の再使用ができないので、治療薬の選択はリウマチ医にとって今後の重要な課題です。

 
関節リウマチ(RA)患者は一般人口に比較して 2~4 倍の頻度でリンパ腫の合併が多いことが知られています。近年、RA治療のアンカードラッグ(中心的薬剤)として位置づけられているメトトレキサ ート(MTX)投与中にリンパ腫を含めたリンパ増殖性疾患(MTX 関連リンパ増殖性疾患:MTX-LPD)がときに発症するという報告があり、一部は死亡に至る重篤な合併症として認識されています。
リンパ増殖性疾患(LPD)には 腫瘍性疾患(悪性リンパ腫)、非腫瘍性疾患(反応性過形成)、境界領域病変がありますが、臨床的に問題になるのは悪性リンパ腫です。診断は病変部位の生検(組織をとって調べる)で確定します。

(日本における患者背景)
日本でのMTX-LPDの報告では 診断時年齢は中央値 67 (34-87) 歳、男女比約 1 : 2 、RA 発症から LPD 発症までの期間は平均 11 年、MTX 投与期間は約 5 年でした。

(臨床像)
MTX-LPD と診断された半数はリンパ節の腫大で見つかりますが、半数はリンパ節外である消化管・皮膚・肺・唾液腺・甲状腺・扁桃・鼻腔の病変として見つかっており、通常のリンパ腫に比べて MTX 服用中の LPD はリンパ節以外の病変が多いのが特徴です。
患者さんは頸部や腋窩などにリンパ節の腫脹を見つけた際に、すぐ 受診していただくのが早期発見につながります。
組織型はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBL)が 35-60 %と最も多く、次にホジキンリンパ腫が 12-25 %となっています。
メトトレキサート(MTX)の投与期間、投与量と発症の因果関係は証明されていませんが、特徴的なのは MTX の休薬に伴って約 30 % に症状の寛解が見られることです。しかし約 50 % は寛解後に再燃するといわれています

(治療)
MTX-LPD の治療は疑われる症状出現後、ただちに MTX を中止し 2 週間の経過観察を行うことが治療の第一選択とされています。病変の退縮を認める場合は追加治療を行わずに慎重に経過観察をします。MTX の中止のみで寛解に至らなければ組織生検で診断を確定した後、組織型に応じた化学療法が必要となります。
MTX-LPD 寛解後の関節リウマチの治療は 日本リウマチ学会の「2016年 MTX 診療ガイドライン」によると「免疫抑制作用を持つ薬剤を極力避け、MTX の再使用や TNF 阻害作用を持つ生物製剤の使用は再発のリスクを考慮し原則行わない」となっています。このため治療薬の選択はリウマチ医にとって今後の重要な課題です。

(2017.10.05)

バイオシミラーとは

2003年以降 関節リウマチの患者さんへの投与が可能になったバイオ(生物学的)製剤は多くの患者さんに対して高い有効性を発揮しリウマチ治療を劇的に改善しましたが、その反面 並外れて高い薬剤価格のため、使っている患者さんに大きな経済的負担を強いることになりました。ところが多くの先行バイオ製剤が2012年以降に特許期間の終了を迎えるため、今後 安価なバイオシミラー(バイオ後続品)が発売される予定です。このため より多くの患者さん方がバイオ製剤による治療を受けることができると思われます。

関節リウマチはいったん発症すると長期間にわたって治療を継続する必要がある疾患です。そのため医療費が患者やその家族に重くのしかかってきます。特に2003年以降 関節リウマチの治療に使用が可能となったバイオ(生物学的)製剤は多くの患者さんに対して極めて高い有効性を発揮し、関節リウマチの治療を劇的に改善しました。その反面 薬剤価格が並外れて高いので 身体障害のない段階から治療を開始する場合 身体障害者認定の対象にならず、高齢者でなければ3割負担による支払いを余儀なくされます。

表は先行バイオ製剤とその薬価(2012年)と一日当たりの薬剤費をまとめたものです。バイオ製剤の1日当たりの薬剤費はトシリズマブ(アクテムラ®)が 3,146円と最も低価格で 次いでインフリキシマブ(レミケード®)の3,591円、アバタセプト(オレンシア®)の3,819円、エタネルセプト(エンブレル®)の4,429円、アダリムマブ(ヒュミラ®)とゴリムマブ(シンポニー®)がともに5,078円の順になっています。高額療養費制度があるとはいうものの、1ヵ月28,000円から45,000円の自己負担金の増加は非常に大きく、患者さんの経済的負担を増しています。
日本リウマチ友の会が行った関節リウマチの患者さん3,142名を対象としたアンケート調査では「バイオ製剤を使いたいが 高額なので使えない」と回答した方が43.1%に達し、経済的理由でその恩恵を受けることができない患者さんが多数おられることがわかりました。
またバイオ製剤は高い有効性と安全性が得られることが関節リウマチ以外の多くの疾患でも確認され、近年急速に使用が増加しており、新薬にしめるバイオ製剤の割合は年々増加しています。数年以内には世界での売り上げ上位10品目中8品目をバイオ製剤が占めるとの予測もあります。このことが医療費高騰の原因にもなっています。

このような状況の中、2012年以降に先行バイオ医薬品の中で特許期間の終了を迎えるものが出てくるため、より安価なバイオシミラー(バイオ後続品)の登場が期待されるようになりました。

医薬品には低分子医薬品と高分子医薬品があり、バイオ製剤は高分子医薬品に分類されます。バイオ製剤は超高分子で複雑な構造をもつ抗体製剤のため 全く同じものが作れません。そこで低分子医薬品の後発品をジェネリック医薬品と呼ぶのに対し、バイオシミラーという呼び名を用いて区別しています。

つまりバイオシミラーとは先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として異なる製造販売業者により開発された医薬品です。バイオシミラーの開発には新薬とほぼ同様の試験を行う必要があり、申請にあたっては それらすべてのデータが要求されるので、高い品質が確保されるものと考えられます。

現在 日本で発売されているバイオシミラーはインフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」のみですが エタネルセプトとアダリムマブが開発中あるいは発売予定です。気になる薬価はいずれのバイオシミラーも先行バイオ医薬品の70%程度とされています
(2016.09.07)

関節リウマチ治療における「B型肝炎ウイルスの再活性化」とは

最近、関節リウマチの治療は メトトレキサート( MTX) や生物学的製剤の使用により飛躍的に進歩しました。ところがB型肝炎ウイルスに感染して治ゆした「既往感染者」や感染後ウイルスを体外に排除できず保有し続ける「持続感染者(キャリア)」が、このような薬剤による治療を受けると血中にB型肝炎ウイルスが再検出されたり、血中ウイルス量が増加してくることがあります。これを「B型肝炎ウイルスの再活性化」といいます。さらに血中ウイルス量が増加すると肝炎を発症することがあります。これを「de novo(デノボ) B型肝炎」といい 重症化しやすいため、発症前からの抗ウイルス剤の予防投与が強く勧められています。

B型肝炎ウイルス(HBV)は 全世界で約3億5000万人が感染していると言われ、そのうち日本では約130~150万人(およそ100人に1人)が感染していると推定されています。

HBVへの感染は HBVの含まれる血液や体液がヒトの体内に入ることでおこります。具体的にはHBV陽性母親からの出産時の母子感染(現在ではワクチンの予防投与の普及でかなり減少)、輸血(現在ではほとんどない)、医療者の針刺し事故、性交渉、入れ墨・覚せい剤注射などでの器具の使い回し などがあります。

現在も 年間約10,000人の新規感染者がいると言われています。

B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に感染して肝炎をおこします。肝炎が持続すると慢性肝炎から肝硬変さらには肝細胞がんへと進展する可能性があります。

(B型肝炎ウイルスの再活性化とは)

B型肝炎ウイルス(HBV)に感染すると多くの人は肝炎の症状をおこさずにウイルスは体内から排除されてなおります(治ゆ)。一部の人では急性肝炎を発症した後になおります。このようにHBV感染がなおった人を「既往感染者」といいます。しかし 既往感染者でもHBVの遺伝子の一部が肝臓の細胞中に残ってしまうことがわかって来ました。
一方でHBVに感染後ウイルスが完全に排除されず、肝炎を発症しないまま体内にウイルスを保有し続ける場合があります。このような人を「持続感染者(キャリア)」といいます。

これらの「既往感染者」や「持続感染者(キャリア)」が化学療法や免疫抑制療法を受けている間あるいは終了後に血中にB型肝炎ウイルスが検出されるようになったり、ウイルス量が増加したりする場合があります。これを「B型肝炎ウイルスの再活性化」といいます。
さらに血中のHBV量が十分に増加すると肝炎を発症することがあります。これを「de novo(デノボ)B型肝炎」といいますが、De novo B型肝炎は重症化しやすいのが特徴で、時に急速に肝不全に至る死亡率の高い劇症肝炎化することが知られています。

①持続感染者(キャリア)と既往感染者の診断

血液検査でHBs抗原が陽性ならば「持続感染者(キャリア)」、HBs抗原が陰性でHBc抗体、HBs抗体のいずれかまたは両者が陽性ならば「既往感染者」と診断します。
持続感染者(キャリア)または既往感染者と診断された場合には血中B型肝炎ウイルスのDNA量 ( HBV – DNA )を調べて血中ウイルス量を測定するなどのさらに詳しい検査が必要です。

②意外に高い関節リウマチ患者のB型肝炎ウイルス既往感染者率

HBs抗原が陰性の関節リウマチ患者 509名を調査したところ、157名 ( 30.8 % )でHBc抗体、HBs抗体のいずれかまたは両者が陽性となり「既往感染者」と診断されました。
( Prevalence of reactivation of hepatitis B virus replication in rheumatoid arthritis patients. Modern Rheumatology, 2011 ( 21 ) :16 – 23 )

③観察期間18カ月でB型肝炎ウイルス再活性化率は8.3%

さらに上記の研究で「既往感染者」と診断された 157 名を18ヶ月間 経過観察したところ、そのうちの 13名 ( 8.3 % ) が血中B型肝炎ウイルスDNA ( HBV – DNA )が陽転化し、B型肝炎ウイルスの再活性化が認められました。

④使用頻度の高かった併用抗リウマチ薬

上記の研究で観察期間中に用いた抗リウマチ薬について血中B型肝炎ウイルスDNA ( HBV – DNA )が陽転化した13名と持続陰性だった144名を比較検討したところ、陽転化群において 生物学的製剤・メトトレキサート(MTX)・高用量の副腎皮質ステロイド・タクロリムス水和物の使用頻度が有意に高い ( P<0.01 ) ことが明らかとなりました。
このことから既往感染者でこれらの薬剤を使用する場合は定期的なHBV-DNAの測定が必要とされました。

(B型肝炎ウイルス再活性化による de novo 肝炎発症予防対策)

関節リウマチの治療中に生物学的製剤・メトレキサート(MTX)・高用量の副腎皮質ステロイド・タクロリムス水和物のような薬剤が使用される場合、B型肝炎ウイルス持続感染者(キャリア)および既往感染者の一部にB型肝炎ウイルス再活性化によりB型肝炎が発症し(de novo 肝炎)、その中には死亡率の高い劇症肝炎化する場合があるので注意が必要です。

下図の日本肝臓学会が発表した「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」によると治療開始前にHBs抗原陽性のキャリアはもちろんのこと 既往感染者で血中B型肝炎ウイルスDNA( HBV – DNA )が陽性の場合には 治療前できるだけ早期から抗ウイルス剤(核酸アナログ ― バラクルードR)の投与を開始して HBV – DNA を検出感度以下にすることが望ましいとされています。また HBV – DNAが陰性でも治療中は定期的にHBV – DNAを測定し、もし陽転したら直ちに核酸アナログの投与を開始すべきとしています。
肝炎発症後に核酸アナログを投与しても十分な効果は期待できず、また肝炎の発症により関節リウマチの治療も困難になるので、肝炎発症に先行してHBV – DNA が陽転化した時点で核酸アナログを予防投与することが極めて重要とされています。

(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン (2011年改訂版) より引用)

(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン (2011年改訂版) より引用)

(2016.02.20)

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版について(主な改訂項目)

脆弱性骨折なしの場合の治療開始基準で若干の変更がなされた他、抗RANKL抗体やビスホスホネート製剤の一部に高い評価が与えられました。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版が7月に発刊されました。2011年版以来となりますが、その間に骨粗鬆症の診療における重要な基準の改定が相次いだこと、新規の作用機序を有する薬剤や既存薬の新たな剤形が登場したことから改訂版が策定されました。内容は原発性骨粗鬆症で脆弱性骨折(わずかな外力で生じたと考えられる非外傷性骨折のこと)がない場合の薬物治療開始基準に若干の変更がなされた他、治療薬の評価は推奨グレードではなく有効性となり、選択しやすくなりました。

*A,B,C の意味は本文中の説明を参照

具体的には新規のテリパラチド酢酸塩(テリボン®)、イバンドロネート(ボンビバ®)、抗RANKL抗体デノスマブ(プラリア®)、既存薬の注射剤や点滴製剤といった新しい剤形に関する情報とエビデンスを追加したほか、治療薬の選択や評価管理に関する記述を追加しました。
さらに 骨粗鬆症治療薬については推奨グレード(A-D)に替えて「有効性の評価(A,B,C)としました。骨密度上昇効果については 「A :上昇効果がある」「B:上昇するとの報告はある」「C:上昇するとの報告はない」、骨折発生抑制効果は椎体・非椎体・大腿骨近位部のそれぞれについて「A:抑制する」「B: 抑制するとの報告がある」「C:抑制するとの報告はない」との基準で評価することになりました。
骨粗鬆症に適応がある治療薬のなかで デノスマブ(プラリア皮下注60mgシリンジ®)、アレンドロネート(フォサマック®、ボナロン®)、リセドロネート(ベネット®、アクトネル®)の有効性については 骨密度上昇効果ならびに椎体・非椎体・大腿骨近位部いずれの骨折発生抑制効果ともにA評価が下されています。
(2015.10.17)

「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2014年版」について

2014年版は 日本でのエビデンスを基に簡便にリスク評価ができるようにし、臨床現場で使いやすい指針となることを目指しました

前回(2014年4月14日)のTopics直後の2014年4月17日に日本骨代謝学会から「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2014年版」が発表されました。前版は2004年に出されており、10年ぶりの改訂となります。改訂の理由として前版を遵守する医師が2割程度しかいなかったため、日本でのエビデンスを基に 簡便なリスク評価ができるようにして臨床現場で使える指針とすることを目指したとされています。
改訂された本指針は「既存骨折」「年齢」「ステロイド投与量」「腰椎骨密度」の4つの危険因子ごとにスコア付けし、スコアが3以上なら薬物療法を推奨する仕組みになっています(図1 参照)。

p1

スコアが3以上であれば 第一選択薬として アレンドロネート(フォサマック®、ボナロン®)またはリセドロネート(アクトネル®、ベネット®)、の投与を推奨しています(図2参照)。

ステロイドの内服や点滴による骨粗鬆症患者は日本に約200万人いると推定されています。骨粗鬆症はステロイド投与による最も多い副作用として知られており、椎体骨折や大腿骨近位部骨折といった関連骨折につながります。骨折リスクは投与開始から3~6カ月でピークに達します。前回のTopicsにも書いたように 低用量の使用であっても安心はできないとされています。
また 今は投与されていなくても 過去に一度でも3ヶ月以上のステロイド投与歴があれば骨折リスクは 2.25倍に上がります。たとえ投与中止後に骨密度が回復しても 骨の構造自体に異常がおこるため 数年間にわたり骨折リスクは低下しません。年齢が若くても同様で、椎体骨折のリスクは女性よりもむしろ男性に高いとみられています。
(2015.07.21)

関節リウマチと骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について

関節リウマチの患者さんは 活動性の低下、薬物の影響、病気自体の影響などにより 高率に骨粗鬆症を合併します。骨粗鬆症治療の目的は骨折の危険性を抑制し、QOL(日常生活の質)の維持改善をはかることです。関節リウマチに合併した骨粗鬆症の治療は関節リウマチのコントロール(T2Tによる寛解導入)が最も重要で 薬剤では骨吸収抑制剤であるビスホスホネート製剤に高い効果のあることが認められています。

(はじめに)

関節リウマチの患者さんでは骨折のリスク(危険度)が高く、関節リウマチでない人に比べて 大腿骨近位部骨折は 1.51倍、骨盤骨折は 2.56 倍に増加しています。関節リウマチの活動性が高い場合、活動性低下に陥り、その結果 筋力低下がおこり転倒しやすくなるのが一因と思われますが、骨粗鬆症の合併により さらに骨折リスクは高まります。関節リウマチと骨粗鬆症は密接な関係があり、関節リウマチの患者さんは年齢に関係なく骨粗鬆症になりやすいことがわかっています。このため関節リウマチの患者さんでは合併する骨粗鬆症の診断・治療が重要な課題となっています。

(骨粗鬆症とは)

骨は体を支え、カルシウムの貯蔵庫として働いています。骨は固く、一度発育したら変化がないように見えますが、実は絶えず骨を壊す細胞(破骨細胞)により古い骨は壊され、骨を作る細胞(骨芽細胞)により新しく作られています。「骨が壊される過程-骨吸収」と「骨が作られる過程-骨形成」が絶えず繰り返されることを「骨のリモデリング」と言います。このリモデリングのサイクルが何らかの理由でおかしくなり、骨が作られる速度よりも 骨が壊される速度が速くなり 骨量(骨密度)が減少して骨がもろくなった状態を骨粗鬆症と言います。この結果、骨の変形、骨の痛み、さらには骨折をおこします。
骨折による痛みや障害はもちろんのこと、大腿骨近位部や脊椎椎体の骨折は高齢者の寝たきりにつながり、QOL(生活の質)を著しく低下させます。腰背部痛の30%は骨粗鬆症が原因です。

骨粗鬆症は「原発性骨粗鬆症」と「続発性骨粗鬆症」に分類されます。「原発性骨粗鬆症」は原因不明の骨粗鬆症のことで加齢や閉経後に見られ、骨粗鬆症の90%を占めます。「続発性骨粗鬆症」は原因が明らかな骨粗鬆症のことです。原因としては副甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病などの様な疾患やステロイド剤投与による薬剤性のものなどがあります。

(原発性骨粗鬆症の診断)

原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)によると、

  1. 椎体または大腿骨近位部に脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折(※)を認めるか、その他(肋骨、骨盤、上腕骨近位部、橈骨遠位部、下腿骨)の脆弱性骨折があり骨密度が若年成人平均値の80%未満である
  2. 脆弱性骨折はないが骨密度が若年成人平均値の70%以下である
  3. 1.2.のいずれかを満たすものを原発性骨粗鬆症と診断するとされています。

※脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折とは わずかな外力で生じたと考えられる非外傷性骨折のことです。

tp140414

(骨粗鬆症の治療の目的)

骨粗鬆症治療の目的は骨折の危険性を抑制し、QOL(生活の質)の維持改善をはかることです。
骨粗鬆症による骨折は大腿骨近位部骨折のみならず、椎体骨折においても著明なADL(日常生活動作)・QOL低下と死亡リスクの増大につながることが明らかになっています。このため骨折の予防という観点から骨粗鬆症の治療が必要なのです。薬物療法の進歩で骨粗鬆症の骨折の危険性をある程度低下させることが可能になりました。しかし、現状の薬物治療には効果に限界があり骨強度の低下により骨折の危険性が増大していることが明らかな例において、その危険性をせいぜい30~50%低下させるに過ぎないということを十分理解しておくことが必要です。骨粗鬆症によって増大した骨折の危険性を低下させ健全な骨を維持するという目的のためには薬物療法だけでは十分ではありません。栄養、運動などを含め、骨強度を維持・増加させる生活習慣を確立するとともに、転倒などの骨折危険因子を回避する様な生活習慣をすすめることも重要なことです。

(骨粗鬆症の薬物療法)

「2011年版 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準が見直されたことが重要な変更点です。つまり 薬物治療の目的が骨粗鬆性骨折の予防である ことを最初に明記し、「脆弱性骨折(大腿骨近位部骨折または椎体骨折)がある」患者は新たな骨折発生の危険性が上昇することから、骨密度測定の結果を問わず薬物治療を検討することとしました。大腿骨近位部骨折または椎体骨折以外の脆弱性骨折がある患者についても骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満であれば薬物治療を検討するとしています。

骨粗鬆症の治療薬としては ①腸管からのカルシウム吸収量を増やす薬 ②骨形成を助ける薬 ③骨吸収(骨を壊す)を抑える薬 の3つが主に使用されます。

活性型ビタミンD3製剤-アルファカルシドール(アルファロール® ,ワンアルファ®)、 カルシトリオール(ロカルトロール®)、エルデカルシトール(エディロール®)など

カルシウムをいくら摂取しても腸管から吸収されなければ意味がありません。カルシウムの吸収にはビタミンDが関わっており、日光に当たることでビタミンDは合成されます。ビタミンDは肝臓や腎臓で活性型ビタミンD3となり、小腸のビタミンD受容体に働くことでカルシウム吸収が促されます。2011年に発売されたエルデカルシトールは従来の活性型ビタミンD3より骨への作用が強化されており、骨密度の改善、椎体骨折の予防効果が強くなったのが特徴です。

ビタミンK2製剤-メナテトレノン(グラケー®)

ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促進します。

ビスホスホネート製剤-エチドロネート(ダイドロネル®),アレンドロネート(フォサマック®、ボナロン®)、リセドロネート(アクトネル®、ベネット®)、ミノドロン酸(ボノテオ®、リカルボン®)など

ビスホスホネートは骨に取り込まれた後に 破骨細胞に取り込まれて 破骨細胞を機能不全にさせることにより骨吸収(骨を壊す)を抑えます。その結果 骨密度の上昇、骨折抑制効果を発揮し、高いエビデンス(※)もあります。
ビスホスホネート製剤は 腸管からの薬物吸収が悪いため「起床後すぐに服用し、その後30分は横になったり水以外を飲んだり食べたりしてはいけない」などの制限が付いたため、服用を継続できない人がいました。このためアレンドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸は 月1回服用で済む製剤も発売されています。しかし 食道炎や胃・十二指腸潰瘍の人には使えないという欠点がありました。そこで 2012年にアレンドロネートの点滴静注製剤(ボナロン点滴静注バッグ900μgR)が発売され、さらに2013年には新しいビスホスホネート製剤であるイバンドロ酸ナトリウム水和物の静注製剤(ボンビバR静注)が発売されました。いずれも月1回の投与でよく、経口剤のような服用時の制約もないため、継続しやすい薬剤であることが期待できます。
その他の副作用として抜歯などの際の顎骨壊死や長期服用時の 大腿骨転子下・骨幹部骨折が報告されていますので注意して使用すべきことはもちろんですが、これらの副作用の発生率はきわめて低いので ビスホスホネート製剤の骨折抑制効果に対する 高いエビデンスが重視され臨床現場では最も使用されています。


※エビデンスとは 実験や調査などの研究結果から導かれた「裏付け」 のこと

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM) ―ラロキシフェン(エビスタ®)、バゼドキシフェン(ビビアント®)

女性ホルモンの1つであるエストロゲンは骨吸収抑制作用を示しますが、乳がんなどの発がん性があることがあることが知られています。そのため 乳房のエストロゲン受容体には作用せず、骨のエストロゲン受容体にのみ作用すれば発がん性を気にせず使用することができます。このように骨のエストロゲン受容体に対して選択的に作用する薬剤が選択的エストロゲンモジュレーター(SERM)です。ビスホスホネート製剤のように服用時間の制限はありませんが、閉経後の女性のみが適応です。
骨密度上昇や椎体骨折抑制効果に対するエビデンスはありますが、大腿骨近位部骨折を抑制するというエビデンスはまだありません。

副甲状腺ホルモン(PTH) 製剤―テリパラチド(フォルテオ®、テリボン®)

副甲状腺ホルモンの誘導体で フォルテオ®は20μgを毎日、テリボン®は56.5μgを週1回皮下注射で使用します。
副甲状腺機能亢進症で副甲状腺ホルモンの分泌が亢進すると骨吸収が促進され骨粗鬆症となります。つまり副甲状腺ホルモンは骨を壊し骨の量を減少させるホルモンだと主に考えられていました。ところが副甲状腺ホルモンには骨を吸収する一方で、強力に骨形成を促進する作用があるのです。つまり 副甲状腺機能亢進症の様に持続的に血液中の副甲状腺ホルモンの濃度が高い状態では骨は吸収されて減少する状態(骨粗鬆症)に向かいますが、たとえばフォルテオ®の投与の様に24時間ごとに間欠的に副甲状腺ホルモン濃度を上昇させると、今度は強力に骨形成が促進され 骨密度は増加する方向に向かうことがわかりました。そこで骨形成促進剤として副甲状腺ホルモンの誘導体を使用するという考えが生まれました。毎日投与でも週1回投与でも効果は変わりません。骨密度の上昇、椎体骨折・非椎体骨折の抑制効果に対して高いエビデンスがあります。大腿骨近位部骨折を抑制するというエビデンスはまだありません。

テリパラチドはいわゆる第一選択薬ではありません。ビスホスホネート、SERM などの治療でも骨折を生じた例、高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例、骨密度低下が著しい例などで使用が勧められています。

抗RANKL抗体薬-プラリア皮下注®

2013年6月に発売された皮下注射薬で 骨吸収に関与する破骨細胞の形成と活性化を行うタンパク質であるRANKL(ランクル)を阻害するのが抗RANKL抗体薬です。6カ月に1回の皮下注射でよいのが特徴です。主成分であるデノスマブはRANKLに対するモノクローナル抗体であり、選択的にRANKLを抑制して破骨細胞の働きを抑えます。その結果、骨吸収が遮断され、骨粗鬆症を治療することができると考えられています。

カテプシンK 阻害剤

破骨細胞による骨吸収に関与する酵素であるカテプシンK を阻害する抗体製剤が近日中に発売予定です。

スクレロスチン阻害剤

骨細胞から産生され骨形成を抑制するタンパク質であるスクレロスチンを阻害する抗スクレロスチン抗体製剤が新たな骨形成促進剤として開発中です。

(関節リウマチに伴う骨粗鬆症の分類)

①関節炎が起きている関節周辺の骨粗鬆症

原因としてもっとも重要なのは炎症のある関節で作られる IL-1,IL-6,TNF-αなどの炎症性サイトカインと言われる物質です。これらの物質は骨を壊す破骨細胞の数を増やし働きを高める RANKL という物質を誘導することにより骨粗鬆症を引き起こします。炎症関節の障害による痛みや筋力低下による「不動」や閉経も関節周囲の骨粗鬆症に関与します。

②全身性骨粗鬆症

原因として 閉経、不動、関節リウマチ治療薬(ステロイド)があげられます。

関節リウマチ治療薬による骨粗鬆症とは

関節リウマチの治療は近年、メトトレキサート(MTX)を中心とする抗リウマチ薬と生物学的製剤が主体となっています。MTXは関節リウマチでの少量使用では骨への影響はなく、むしろ好ましい方向に働くと考えられています。生物学的製剤の中ではインフリキシマブ(レミケード®)のみが骨密度上昇のエビデンスがありますが、他の生物学的製剤も同様の機序で効果が期待できます。

関節リウマチ治療薬の中ではステロイド剤のみが明らかに骨粗鬆症をひきおこします。ステロイドは骨芽細胞を傷害して骨形成を抑制、破骨細胞の生存を持続させて骨吸収を促進します。

ステロイド性骨粗鬆症とは経口ステロイドを長期に服用している人がかかりやすい骨粗鬆症です。ステロイド性骨粗鬆症の特徴として骨密度の低下よりも骨の強度低下に伴う骨折リスクが大きいということがあります。そのため骨密度低下が著しくないのに骨折することも少なくありません。

1日の経口ステロイドの服用量が増えると脊椎椎体骨折のリスクも高くなりますが、服用量が少ないからリスクがなく、安心ということはありません。ステロイドの量としてプレドニゾロンに換算して1日 2.5 mg 未満の服用でも椎体骨折リスクは1.55 倍、1日7.5 mg以上では 5 倍以上、大腿骨近位部骨折も2倍以上になります(日本代謝学会「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」2004年度版から)。

ステロイド性骨粗鬆症の治療は骨折リスクの高い症例を治療対象にするようにわが国では「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン(2004年度版)」が用いられています。

内容は

経口ステロイドを3ヶ月以上使用中で脆弱性骨折を認める場合は直ちに薬物療法を開始する

脆弱性骨折を認めない場合でも、骨密度測定で若年成人平均値(YAM)の80%未満かプレドニゾロン換算で5mg以上服用中の場合は薬物治療を開始する

第一選択の薬剤はビスホスホネート製剤とする

という内容で脆弱性骨折の有無、骨密度、ステロイド薬平均投与量を骨折リスク上昇の因子として検討し、骨折リスクの高い順に治療へ導入されるよう重み付けしたものです。

(関節リウマチに合併した骨粗鬆症の診断・治療方針)

診断はステロイド使用例を除き、原発性骨粗鬆症の診断基準が用いられてきました。
診断においてDXAによる骨密度測定は骨粗鬆症の診断において重要な検査ですが、ステロイド薬が使われていることがある関節リウマチでは骨密度が正常でも骨強度が低下していることがあるので注意が必要です。

治療では、まず 関節リウマチの疾患活動性のコントロールが最も重要です。T2Tの原則に従い、早期の寛解を目指します(関節リウマチの治療目標とは-2011.05.07 Topics参照)。
関節リウマチに合併した骨粗鬆症に対する薬剤の骨折防止効果を検証した大規模な報告は未だありません。
関節リウマチでは炎症性サイトカインにより骨吸収が亢進しており、経口ステロイド剤が併用されている場合があることを考慮すると骨吸収抑制作用のあるビスホスホネート系の薬剤を使用するのが理にかなっています。現在、骨粗鬆症治療薬の中で関節リウマチに合併した骨粗鬆症による骨折抑制効果に対するエビデンスが確認されているのは ビスホスホネート系の薬剤のみです。抗RANKL抗体薬は発売されて間もないので エビデンスはないのですが、強力な骨吸収抑制作用があるので効果が期待されます。

関節リウマチに合併した骨粗鬆症の明確な治療開始基準はありませんが、経口ステロイド投与例を除き、先に述べた「2011年版 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の基準が用いられて来ました。経口ステロイドを併用している場合には「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン(2004年度版)」を参考にして 骨折リスクが高い場合にはビスホスホネート製剤を積極的に使用し、場合によっては PTH製剤や抗RANKL抗体薬の使用も考慮すべきと思われます。

関節リウマチに合併した骨粗鬆症では 続発性骨粗鬆症の原因となる糖尿病、慢性腎臓病、肺疾患、アルコール多飲などがないか確認しておくことも必要です。
(2014.04.14)

非ステロイド性抗炎症薬( NSAIDs, 痛み止めとして処方される薬 )による胃腸障害について

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は痛み止めとして関節リウマチの治療において使用されることの多い薬剤です。副作用として最も多いのが上部消化管病変で 特に胃・十二指腸潰瘍が問題となっています。NSAIDs による潰瘍の予防には ①プロスタグランジン(PG)製剤 ②高用量のファモチジン ③プロトンポンプ阻害薬(PPI) のみが有効とされています。しかし NSAIDs の長期の漫然な使用には十分に注意を払う必要があります。

(はじめに)

非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs, NSAIDsと略し「エヌセイド」と読む)とは抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称です。
変形性関節症や関節リウマチなどの痛みに対し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が痛み止めとして処方される機会は多く、多くの医療機関においては第一選択肢となっています。日本国内における胃・十二指腸潰瘍の死亡者数は毎年 約3,500 人との報告があり、そのほとんどがNSAIDsによるものと推察されています。一方、米国における調査では、NSAIDs投与を受けた患者 1,300 万人のうち毎年 10万7,000人が入院し、1万6,500人がNSAIDsによる消化管合併症で亡くなっています。さらにNSAIDsによる死亡者数は、白血病、エイズについで多く、悪性腫瘍よりもNSAIDsによる消化管出血で死亡する患者数の方が多く、処方頻度の多いNSAIDsの漫然な使用には注意を払う必要があるとされています。

A.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による上部消化管障害

1991年の日本リウマチ財団委員会報告では 3ヶ月以上NSAIDsを使用した1,008例の関節リウマチ(RA)患者の 62.3 %に何らかの上部消化管(胃・十二指腸)病変がみられ、その主なものは 胃潰瘍が 15.5 %, 十二指腸潰瘍が 1.9 %, 胃炎が 38.5 % で 何らかの病変がみられた患者のうち実に 54.9 % は無症状でした。この頻度は一般人を対象とした同時期の日本消化器集団検診学会統計のそれと比較して明らかに高率となっています。

潰瘍発症の危険因子として ①高齢 ②潰瘍の既往がある ③ステロイド剤を併用している ④高用量あるいは複数のNSAIDsの使用 ⑤抗凝固療法の併用 ⑥重篤な全身疾患の合併 が挙げられます。

特に 最近多くなった心臓疾患に対する低用量アスピリンによる抗凝固療法の併用は 消化性潰瘍の発生を2倍以上に増加させるという報告があります。

(治療と予防)

2007年に発表された「EBM に基づく胃潰瘍診療ガイドライン(第2版)」によると

①NSAIDsは可能ならば中止し、通常の潰瘍治療を行う

②NSAIDsの中止が不可能ならば プロトンポンプ阻害薬( PPI ; タケプロン®、オメプラール®、オメプラゾン®、ネキシウム®、パリエット®)、あるいはプロスタグランジン(PG)製剤(サイトテック®)による治療を行う

③NSAIDs継続下での再発防止にはプロトンポンプ阻害薬、PG製剤あるいは高用量のH2受容体拮抗薬(ファモチジン、ガスター®)を用い、低用量アスピリン投与下での再発防止にはプロトンポンプ阻害剤を用いることが推奨されています。同時に従来のNSAIDsを 上部消化管病変の発生の少ないことが示されている選択的COX-2阻害薬(セレコキシブ、セレコックス®)に変更することも勧められています。

海外ではNSAIDs潰瘍による出血や穿孔などの重篤な合併症に対して プロトンポンプ阻害剤(PPI)による予防的治療が勧められています。これまでの検討からNSAIDs潰瘍の発生を予防できる薬剤は PPI、 PG製剤、高用量のファモチジンとされています。日本では2010年から一部のPPIがNSAIDs潰瘍の再発予防に健康保険適用となりました。

最近では潰瘍の既往があったり、腎機能低下のある人に対してはNSAIDs でなく、鎮痛解熱剤に分類され 消化管・腎障害がほとんどないとされているアセトアミノフェン(カロナール®)が用いられるようになりました。またモルヒネ様作用を有するオピオイド系鎮痛剤(トラムセット®、トラマール®)が慢性疼痛に対して使用できるようになり、従来の鎮痛剤で効果のない場合ばかりでなく、潰瘍の既往や腎機能障害のある人の鎮痛にも有効な薬剤となりました(2013.10.20 の Topics, 関節リウマチと腎障害の項 参照)。

B.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による下部消化管障害

近年、下部消化管(小腸・大腸)内視鏡検査の進歩によりNSAIDsは胃・十二指腸のみならず小腸や大腸にも潰瘍などの粘膜病変をおこすことが明らかになりました。しかし、NSAIDs下部消化管障害に関する疫学データはなく、最近になってやっとカプセル内視鏡を用いた検討が行われるようになり、NSAIDs投与後の小腸粘膜障害の発生率が 70 % にも達することや選択的COX-2阻害剤が病変の発生を有意に抑えることも報告されています。
治療は原因薬剤の中止・減量です。しかし 予防薬も含め 上部消化管病変に比べて分かっていないことが多いので今後の研究が待たれます。
(2013.12.17)

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関節リウマチと腎機能障害について

関節リウマチでは 治療のために多くの薬物を使用しますので、投与された薬物を体の外に排泄する腎臓の機能は非常に重要です。腎臓の機能が低下すると 投与された薬物が体外に排泄されにくくなり、薬物の作用が強く出たり、副作用が出やすくなったりして 治療の継続が困難になる恐れがあります。投与された薬剤によっておこる薬剤性腎障害もありますので定期的に血液検査、尿検査をうけて 早期に腎障害を発見することが重要です。腎機能の評価には 推算糸球体濾過値( eGFR )が重要視されています

関節リウマチでは治療のために多くの薬物が使用されます。人体に投与された薬物は最終的に体の外に排泄されます。この排泄機構としては 主に「糞中排泄」と「尿中排泄」があります。つまり「便と一緒に排泄されるか」と「尿と一緒に排泄されるか」の2通りです。
糞中から排泄されるということは、肝臓によって薬物の代謝(分解)や消化管への排泄(胆汁排泄)が行われていることを意味します。この様に 薬物の排泄には肝臓が大きく関わっています。
それと同じように薬物は「尿と一緒に排泄される」という排泄機構がありますが、尿は腎臓で作られていますので薬物の排泄には腎臓も大きく関わっています。
腎臓は「肝臓によって薬物が代謝された物質」と「肝臓で代謝されていない未変化の薬物」の両方を尿とともに体外へ排泄します。このため肝臓や腎臓の機能が低下していると薬物が体外に排泄されにくくなり、その結果 薬物の体内(血液中)の濃度が高まり、薬物の作用が強く出すぎたり、副作用が出やすくなったりする可能性が大となります。
多くの薬物の投与をうけている関節リウマチの患者さんでは定期的に血液検査や尿検査を行って 肝・腎機能を調べておくことが必要です。そして 肝・腎機能が落ちている患者さんでは「薬物の投与量を減らす」などの対策が必要です。

( 関節リウマチに合併する腎障害について )

関節リウマチに合併する腎障害としては メサンギウム増殖性腎炎がありますが、軽度な場合が多く、臨床的に高度な腎障害をおこして問題となるのは ①腎アミロイドーシス と ②関節リウマチ治療薬による薬剤性の腎障害 です。

① 腎アミロイドーシス

関節リウマチによる慢性炎症が持続することで血清アミロイドAタンパク(SAA) という物質が肝臓で産生され、このタンパクの分解物がアミロイド線維として腎臓に沈着し、腎機能障害をひきおこします(他の臓器にも沈着して色々な障害をおこすことが知られています)。10年以上の長期罹患の人で発症が多いとされ、炎症のコントロールが不十分であることが要因となります。発症するとネフローゼ症候群だけでなく、腎機能も低下し、透析が必要になり、腎予後は極めて不良です。
ところが 近年 関節リウマチ治療薬の進歩がみられ、メトトレキサート(MTX) が治療に導入されたことで アミロイドーシスの合併が徐々に減少し、また種々の生物学的製剤が使用されるようになったことから合併はさらに減少傾向を示しています。なかでもトシリズマブ(アクテムラR)はインターロイキン6 (IL-6) の生物学的作用を抑えることにより肝臓でのSAA の産生を抑制することが分かっており、アミロイドーシスの治療薬として期待されています。またトシリズマブ投与による腎アミロイドーシスの腎機能の改善例も報告されています。

② 薬剤性腎障害

薬剤性腎障害の原因となるのは a) 抗リウマチ薬 と b) 非ステロイド性抗炎症薬Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs, 略して NSAIDs、いわゆる痛みどめとして処方される薬 ) が主なものです。

a) 抗リウマチ薬による腎障害

腎障害をおこす頻度の高い薬剤として 金チオリンゴ酸ナトリウム(シオゾール®)、ブシラミン(リマチル錠®)、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ®) などが有名です。
特に ブシラミン(リマチル錠R)による腎症は代表的で使用開始から1年以内にタンパク尿の出現を認め、膜性腎症を発症し、ネフローゼ症候群を来すことも少なくありません。多くの場合、早期に発見し、薬剤を中止することで改善しますので 添付文書に記載されている通りに ( Topics 2013.04.12の項 参照 )、月1回の尿検査は必須です。
近年使用されることが多くなったタクロリムス(プログラフR)は輸入細動脈の収縮により 腎血流の低下をひきおこし、腎機能の低下を招くことがありますので特に高齢者には注意が必要です。

b) 非ステロイド性抗炎症薬 ( NSAIDs , ボルタレン®、ロキソニン®、クリノリル®、インフリーS®、ニフラン®、ブルフェン®など痛み止めとして処方される薬すべて)による腎障害

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がひきおこす腎障害の発生機序として腎でのプロスタグランジン(PG)合成の抑制が主であると考えられています。
腎でのPGの働きは腎の血管を拡張させ、腎血流を増大させることですので NSAIDsにより PG産生が抑制されると腎血管が収縮し、腎血流が低下して腎機能が低下します。このため 腎疾患がすでにある人や高齢者で腎機能が低下している人へのNSAIDsの使用は注意が必要で、 漫然と長期にわたって使用することは さらに腎機能低下を加速することにつながりますので避けなければなりません。どうしてもNSAIDs の使用が必要な場合には作用時間の短いNSAIDs を用量を減らして使用するなどの工夫が必要です。

最近では腎機能低下のある人に対してはNSAIDs でなく、鎮痛解熱剤に分類され 腎障害がほとんどないとされているアセトアミノフェン(カロナールR)が用いられるようになりました。米国では1996年にNational Kidney Foundation (国立腎臓財団)、米国老年医学会が慢性腎臓病(CKD)患者や高齢者の痛みに対して鎮痛剤を使用する際はアセトアミノフェンを選択することを推奨しました。我が国の緩和医療でも腎障害患者ではNSAIDs でなくアセトアミノフェンが優先して用いられています。
またモルヒネ様作用を有するオピオイド系鎮痛剤が慢性疼痛に対して使用できるようになり、従来の鎮痛剤で効果のない場合や腎機能障害のある人の鎮痛に有効な薬剤となりました。

( 自分の腎機能を簡単に知る方法 )

腎臓はさまざまな働きをしていますが、最も重要なのは体内を流れる血液をフィルターの役目をしている糸球体で濾過してきれいにするとともに 血液から取り除いた老廃物を尿として排出することです。
腎臓の機能を示すのは GFR(糸球体濾過量の略)で フィルターの役目を果たす糸球体が 1分間にどのくらいの血液を濾過し、尿を作れるかを表します
腎機能が低下すると体内で作られたゴミ(クレアチニンや尿素窒素など)を尿中に捨てることができなくなるため体内に蓄積するようになり、これを反映して血液検査ではクレアチニンや尿素窒素(BUN) が高い値になります。
真の GFRを求めるためには 糸球体から直接 濾液(原尿)を採取する必要があり、大変困難です。
そこで最近、血清クレアチニン値と年齢、性別から簡単に GFRを求める計算式(推算GFR、 eGFR )が日本腎臓学会から提唱されました。

egfr

と難しい計算となっていますが、インターネットで「eGFR 計算 」を検索するか、以下のサイトを開くと簡単に計算ができます。

LinkIcon腎臓の働き(GFR)を推算

下の様な表が出てきますので 性別、年齢、クレアチニン値を記入するだけで eGFR が表示されます。

年齢とクレアチニン値は、半角数字で入力して下さい。

健常者のeGFRは 100 mL/分 前後で、腎機能障害が進行するとともに、また加齢により低下して行きます。血清クレアチニンが正常値でも腎機能が正常とは限りません

慢性腎臓病(CKD)診療ガイドでは腎機能の重症度(病期)評価には eGFR値を重要な指標として用いています。

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(2013.10.20)

新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の日本での発売日が2013年7月30日に決まりました

新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の発売は関節リウマチの患者さんにとって治療薬の選択肢が1つ増えたという朗報ですが、現状では長期の使用成績がないので副作用という点で不安があり、慎重な投与・経過観察が必要な薬剤とされています

2013年2月18日のTopicsで新しい経口抗リウマチ薬(トファシチニブ、ゼルヤンツ®)の発売前情報をお伝えしましたが、日本での発売が 2013年7月30日に決定しました。一番気になっていた薬価ですが、予想通り高く、1錠 2,539円で1日の使用量が2錠なので1日薬価は 5,078円、さらに 1ヶ月分の薬価は152,340円と高額になり生物学的製剤とほぼ同じ額となりました。

これまで抗リウマチ剤に関しては 日本での発売は海外よりかなり遅く、「関節リウマチの治療の根幹をなす薬剤」とされているメトトレキサート(MTX、リウマトレックス®カプセル、メトトレキサート錠®)が11年, 日本初の生物学的製剤 インフリキシマブ(レミケード®)は5年アメリカに遅れての発売でした。

ところが 発売が遅れるということは問題も大きいのですが、その反面 長期にわたる副作用の情報も蓄積されて 安全な使用に役立つというメリットもあるのです。
しかし今回のトファシチニブ(ゼルヤンツ®)に関しては 海外とほぼ同時期の発売のため 長期に使用した場合の副作用に関するデータがありません。

この様な点を懸念した日本リウマチ学会の宮坂信之理事長は、抗リウマチ剤のトファシチニブ(ゼルヤンツ®)が3月25日に製造販売承認を得たことを受け、声明を発表しました。学会は、本剤による重篤感染症や発癌のリスクを懸念しており、適正使用がなされるかどうか、厳しくモニタリングしていく考えを表明しています。

トファシチニブに関しては、米国食品薬品局(FDA)も「用量依存的な重篤感染症、長期暴露時の発癌、免疫抑制に伴うリンパ増殖性疾患のリスクがある」と注意を促しています。学会が懸念しているのは、「安全性に問題のある薬剤を、米国よりも広い適用、同量で承認すること」「経口薬で処方しやすく、使用施設や医師の限定が難しいこと」「従来の市販後全例調査と同じ方法では発癌リスクが評価しづらいこと」などの点で 2月20日付けで製造販売会社のファイザーに慎重な対応を求める要望書を提出していました。

この要望に対してファイザーは、学会の主な懸念4点につきどう対応するかを詳細に説明した文書を3月14日付けで返信しています。その内容は 他の抗リウマチ薬にはない「メトトレキサート®をはじめとする少なくとも1剤による適切な治療でも症状が残る場合」という条件を設定し、さらに、添付文書の警告欄に「重篤な感染症や発癌が発現し、致死的な転帰に至った症例がある」と記載することになりました。全例調査期間の処方は日本リウマチ学会専門医などに限定し、流通管理品目として納入制限を行う考えも明らかにしました。また、全例調査は4000人を対象に3年にわたり実施。2000人の対象群を設けて比較調査を行い、投与中止例についても3年間の追跡調査を行うというものです。
(2013.07.16)