関節リウマチで MTXや生物学的製剤・ JAK 阻害剤の投与を受けている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりやすいのか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック地域におけるリウマチ性疾患患者に対するCOVID-19の影響を詳細に調査した研究はありませんでした。免疫系に作用する生物学的製剤、JAK阻害剤の使用は感染症に対するリスクがやや高まることが指摘されています。そこでこれらの薬剤を投与されている人々が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりやすくなることが不安視されていました。最近、Arthritis and Rheumatology, October 2020 にパンデミック地域であるイタリアのロンバルディア州における初の詳細な調査の結果が発表されましたので紹介します。

 

Favalli E.G., et al. Incidence of COVID-19 in Patients With Rheumatic Diseases Treated With Targeted Immunosuppressive Drugs: What Can We Learn From Observational Data? Arthritis Rheum 2020; 72:1600 – 1606.

 

(研究の目的)

この研究の目的は合成抗リウマチ薬(csDMARDs)または生物学的製剤(Biologic DMARDs)、JAK阻害剤(Targeted synthetic DMARDs)で治療されたリウマチ性疾患の患者における新型コロナ感染症(COVID-19)の発生率と重症度を同じイタリアのロンバルディア州に住む一般住民と比較することです。

(研究の方法)

研究の対象は2020年2月25日から4月10日までの間イタリア、ロンバルディア州の2つの病院で治療された 18 歳以上、平均年齢 53.7歳のリウマチ性疾患(関節リウマチ 531人、乾癬性関節炎 203人、脊椎関節炎 181人、その他の疾患 40人)、合計 955人です( Table 1 )。

最終的な分析は対象となる合成抗リウマチ剤(csDMARDs)、生物学的製剤、JAK阻害剤で少なくとも6カ月以上(平均 13.9年)治療されたロンバルディア州に住む患者に限定されました。比較となる一般住民は18歳以上(平均 51.4歳)のロンバルディア州居住人が選ばれました。COVID-19の診断には鼻咽頭ぬぐい液を採取し、PCR検査が行われました。

(結果)

対象となるリウマチ性疾患患者の55.8%が 抗TNF系生物学的製剤による治療を受けていました。さらに対象患者の47.3%が生物学的製剤のみで治療を受けていました( Table 1 )。

リウマチ性疾患の患者群の中からCOVID-19が6人発症し、そのうち3人は関節リウマチ、2人は乾癬性関節炎、1人はサルコイドーシスでした。これらのCOVID-19患者のうち5人は抗TNF系生物学的製剤を投与されており、その内訳はエタネルセプト3人、アダリムマブ 1人、インフリキシマブ 1人でした。残りの 1人は非TNF系生物学的製剤アバタセプトを投与されていました。また生物学的製剤のみ投与されていたのは 2人で 4人は MTX(2人)、レフルノミド( 1人)、スルファサラジン( 1人)が併用されていました。

重度の COVID-19肺炎をおこしたり、死亡した患者はいませんでした。酸素吸入が必要で入院したのは3人でした。COVID-19と診断されたすべての患者は投与されていた合成抗リウマチ剤(csDMARDs)や生物学的製剤、JAK阻害剤による治療を一時中止されました。それによる疾患の再燃は2人のみに見られました。

COVID-19の発生率は患者群が 0.62 %で 対象となる一般住民が 0.66 %でほぼ一致しました。重症度にも差はありませんでした。

( COVID-19パンデミックに対する患者の対処法 )( Table 2 )

リウマチ性疾患対象患者の 36 %が COVID-19のパンデミックに際し、リウマチ性疾患を管理する方法を調べていました。情報源はリウマチ専門医 77.8 %、インターネット 11.3 %、一般開業医 8.1 %などでした。

ほぼすべての患者(90.6%)は流行から身を守るための特別な予防策を講じており、66.9%は保健当局の推奨事項を厳守していました。自宅隔離は患者の 45.9 %、フェイスマスク着用は 57.2 %、ソーシャルディスタンスは 68.1 %が守っていました。さらに患者の 70.4 %が仕事の休止または遠隔作業に移行していました。患者の 6.8 %のみが現在の治療薬を中断または減量していました。治療薬を中断または減量した患者のうち 2.7 %は感染に対する恐れのためで 4.1%は感染を示唆する症状があったためです。リウマチ性疾患は 89.5 %で安定しており、5.1 %で改善し、悪化が見られたのは 5.4 %でした。悪化のうち27.3%が治療の中止によるものでした。

(考察、結論)

この研究はCOVID-19のパンデミックがおこっている地域の合成抗リウマチ剤(csDMARDs)、生物学的製剤、JAK阻害剤を使用中のリウマチ性疾患患者に対するCOVID-19の影響を詳細に調査した最初の研究です。

COVID-19の流行中に治療薬を減量したり、中止した患者はごく少数でした。このため対象患者の 89.5 %で良好な管理が維持され、5.4 %の患者で再燃が見られました。再燃した患者のうち27.3%が治療の中止によるものでした。

リウマチ性疾患の患者における 合成抗リウマチ剤(csDMARDs)、生物学的製剤、JAK阻害剤の使用は COVID-19の流行地域においても一般住民と比較してCOVID-19発症率と重症度には差がなく、安全であることがわかりました。そして多くの人がリウマチ性疾患の計画的な長期治療を継続したことで COVID-19のパンデミック下においても疾患の悪化がおさえられていました。このような良好な結果が得られたのは感染予防のためのガイドラインを多くの人が守っていたということも重要なポイントです。

 

 

 

 

( 2020.12.27)