バイオシミラーとは

2003年以降 関節リウマチの患者さんへの投与が可能になったバイオ(生物学的)製剤は多くの患者さんに対して高い有効性を発揮しリウマチ治療を劇的に改善しましたが、その反面 並外れて高い薬剤価格のため、使っている患者さんに大きな経済的負担を強いることになりました。ところが多くの先行バイオ製剤が2012年以降に特許期間の終了を迎えるため、今後 安価なバイオシミラー(バイオ後続品)が発売される予定です。このため より多くの患者さん方がバイオ製剤による治療を受けることができると思われます。

関節リウマチはいったん発症すると長期間にわたって治療を継続する必要がある疾患です。そのため医療費が患者やその家族に重くのしかかってきます。特に2003年以降 関節リウマチの治療に使用が可能となったバイオ(生物学的)製剤は多くの患者さんに対して極めて高い有効性を発揮し、関節リウマチの治療を劇的に改善しました。その反面 薬剤価格が並外れて高いので 身体障害のない段階から治療を開始する場合 身体障害者認定の対象にならず、高齢者でなければ3割負担による支払いを余儀なくされます。

表は先行バイオ製剤とその薬価(2012年)と一日当たりの薬剤費をまとめたものです。バイオ製剤の1日当たりの薬剤費はトシリズマブ(アクテムラ®)が 3,146円と最も低価格で 次いでインフリキシマブ(レミケード®)の3,591円、アバタセプト(オレンシア®)の3,819円、エタネルセプト(エンブレル®)の4,429円、アダリムマブ(ヒュミラ®)とゴリムマブ(シンポニー®)がともに5,078円の順になっています。高額療養費制度があるとはいうものの、1ヵ月28,000円から45,000円の自己負担金の増加は非常に大きく、患者さんの経済的負担を増しています。
日本リウマチ友の会が行った関節リウマチの患者さん3,142名を対象としたアンケート調査では「バイオ製剤を使いたいが 高額なので使えない」と回答した方が43.1%に達し、経済的理由でその恩恵を受けることができない患者さんが多数おられることがわかりました。
またバイオ製剤は高い有効性と安全性が得られることが関節リウマチ以外の多くの疾患でも確認され、近年急速に使用が増加しており、新薬にしめるバイオ製剤の割合は年々増加しています。数年以内には世界での売り上げ上位10品目中8品目をバイオ製剤が占めるとの予測もあります。このことが医療費高騰の原因にもなっています。

このような状況の中、2012年以降に先行バイオ医薬品の中で特許期間の終了を迎えるものが出てくるため、より安価なバイオシミラー(バイオ後続品)の登場が期待されるようになりました。

医薬品には低分子医薬品と高分子医薬品があり、バイオ製剤は高分子医薬品に分類されます。バイオ製剤は超高分子で複雑な構造をもつ抗体製剤のため 全く同じものが作れません。そこで低分子医薬品の後発品をジェネリック医薬品と呼ぶのに対し、バイオシミラーという呼び名を用いて区別しています。

つまりバイオシミラーとは先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として異なる製造販売業者により開発された医薬品です。バイオシミラーの開発には新薬とほぼ同様の試験を行う必要があり、申請にあたっては それらすべてのデータが要求されるので、高い品質が確保されるものと考えられます。

現在 日本で発売されているバイオシミラーはインフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」のみですが エタネルセプトとアダリムマブが開発中あるいは発売予定です。気になる薬価はいずれのバイオシミラーも先行バイオ医薬品の70%程度とされています
(2016.09.07)