関節リウマチと腎機能障害について

関節リウマチでは 治療のために多くの薬物を使用しますので、投与された薬物を体の外に排泄する腎臓の機能は非常に重要です。腎臓の機能が低下すると 投与された薬物が体外に排泄されにくくなり、薬物の作用が強く出たり、副作用が出やすくなったりして 治療の継続が困難になる恐れがあります。投与された薬剤によっておこる薬剤性腎障害もありますので定期的に血液検査、尿検査をうけて 早期に腎障害を発見することが重要です。腎機能の評価には 推算糸球体濾過値( eGFR )が重要視されています

関節リウマチでは治療のために多くの薬物が使用されます。人体に投与された薬物は最終的に体の外に排泄されます。この排泄機構としては 主に「糞中排泄」と「尿中排泄」があります。つまり「便と一緒に排泄されるか」と「尿と一緒に排泄されるか」の2通りです。
糞中から排泄されるということは、肝臓によって薬物の代謝(分解)や消化管への排泄(胆汁排泄)が行われていることを意味します。この様に 薬物の排泄には肝臓が大きく関わっています。
それと同じように薬物は「尿と一緒に排泄される」という排泄機構がありますが、尿は腎臓で作られていますので薬物の排泄には腎臓も大きく関わっています。
腎臓は「肝臓によって薬物が代謝された物質」と「肝臓で代謝されていない未変化の薬物」の両方を尿とともに体外へ排泄します。このため肝臓や腎臓の機能が低下していると薬物が体外に排泄されにくくなり、その結果 薬物の体内(血液中)の濃度が高まり、薬物の作用が強く出すぎたり、副作用が出やすくなったりする可能性が大となります。
多くの薬物の投与をうけている関節リウマチの患者さんでは定期的に血液検査や尿検査を行って 肝・腎機能を調べておくことが必要です。そして 肝・腎機能が落ちている患者さんでは「薬物の投与量を減らす」などの対策が必要です。

( 関節リウマチに合併する腎障害について )

関節リウマチに合併する腎障害としては メサンギウム増殖性腎炎がありますが、軽度な場合が多く、臨床的に高度な腎障害をおこして問題となるのは ①腎アミロイドーシス と ②関節リウマチ治療薬による薬剤性の腎障害 です。

① 腎アミロイドーシス

関節リウマチによる慢性炎症が持続することで血清アミロイドAタンパク(SAA) という物質が肝臓で産生され、このタンパクの分解物がアミロイド線維として腎臓に沈着し、腎機能障害をひきおこします(他の臓器にも沈着して色々な障害をおこすことが知られています)。10年以上の長期罹患の人で発症が多いとされ、炎症のコントロールが不十分であることが要因となります。発症するとネフローゼ症候群だけでなく、腎機能も低下し、透析が必要になり、腎予後は極めて不良です。
ところが 近年 関節リウマチ治療薬の進歩がみられ、メトトレキサート(MTX) が治療に導入されたことで アミロイドーシスの合併が徐々に減少し、また種々の生物学的製剤が使用されるようになったことから合併はさらに減少傾向を示しています。なかでもトシリズマブ(アクテムラR)はインターロイキン6 (IL-6) の生物学的作用を抑えることにより肝臓でのSAA の産生を抑制することが分かっており、アミロイドーシスの治療薬として期待されています。またトシリズマブ投与による腎アミロイドーシスの腎機能の改善例も報告されています。

② 薬剤性腎障害

薬剤性腎障害の原因となるのは a) 抗リウマチ薬 と b) 非ステロイド性抗炎症薬Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs, 略して NSAIDs、いわゆる痛みどめとして処方される薬 ) が主なものです。

a) 抗リウマチ薬による腎障害

腎障害をおこす頻度の高い薬剤として 金チオリンゴ酸ナトリウム(シオゾール®)、ブシラミン(リマチル錠®)、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ®) などが有名です。
特に ブシラミン(リマチル錠R)による腎症は代表的で使用開始から1年以内にタンパク尿の出現を認め、膜性腎症を発症し、ネフローゼ症候群を来すことも少なくありません。多くの場合、早期に発見し、薬剤を中止することで改善しますので 添付文書に記載されている通りに ( Topics 2013.04.12の項 参照 )、月1回の尿検査は必須です。
近年使用されることが多くなったタクロリムス(プログラフR)は輸入細動脈の収縮により 腎血流の低下をひきおこし、腎機能の低下を招くことがありますので特に高齢者には注意が必要です。

b) 非ステロイド性抗炎症薬 ( NSAIDs , ボルタレン®、ロキソニン®、クリノリル®、インフリーS®、ニフラン®、ブルフェン®など痛み止めとして処方される薬すべて)による腎障害

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がひきおこす腎障害の発生機序として腎でのプロスタグランジン(PG)合成の抑制が主であると考えられています。
腎でのPGの働きは腎の血管を拡張させ、腎血流を増大させることですので NSAIDsにより PG産生が抑制されると腎血管が収縮し、腎血流が低下して腎機能が低下します。このため 腎疾患がすでにある人や高齢者で腎機能が低下している人へのNSAIDsの使用は注意が必要で、 漫然と長期にわたって使用することは さらに腎機能低下を加速することにつながりますので避けなければなりません。どうしてもNSAIDs の使用が必要な場合には作用時間の短いNSAIDs を用量を減らして使用するなどの工夫が必要です。

最近では腎機能低下のある人に対してはNSAIDs でなく、鎮痛解熱剤に分類され 腎障害がほとんどないとされているアセトアミノフェン(カロナールR)が用いられるようになりました。米国では1996年にNational Kidney Foundation (国立腎臓財団)、米国老年医学会が慢性腎臓病(CKD)患者や高齢者の痛みに対して鎮痛剤を使用する際はアセトアミノフェンを選択することを推奨しました。我が国の緩和医療でも腎障害患者ではNSAIDs でなくアセトアミノフェンが優先して用いられています。
またモルヒネ様作用を有するオピオイド系鎮痛剤が慢性疼痛に対して使用できるようになり、従来の鎮痛剤で効果のない場合や腎機能障害のある人の鎮痛に有効な薬剤となりました。

( 自分の腎機能を簡単に知る方法 )

腎臓はさまざまな働きをしていますが、最も重要なのは体内を流れる血液をフィルターの役目をしている糸球体で濾過してきれいにするとともに 血液から取り除いた老廃物を尿として排出することです。
腎臓の機能を示すのは GFR(糸球体濾過量の略)で フィルターの役目を果たす糸球体が 1分間にどのくらいの血液を濾過し、尿を作れるかを表します
腎機能が低下すると体内で作られたゴミ(クレアチニンや尿素窒素など)を尿中に捨てることができなくなるため体内に蓄積するようになり、これを反映して血液検査ではクレアチニンや尿素窒素(BUN) が高い値になります。
真の GFRを求めるためには 糸球体から直接 濾液(原尿)を採取する必要があり、大変困難です。
そこで最近、血清クレアチニン値と年齢、性別から簡単に GFRを求める計算式(推算GFR、 eGFR )が日本腎臓学会から提唱されました。

egfr

と難しい計算となっていますが、インターネットで「eGFR 計算 」を検索するか、以下のサイトを開くと簡単に計算ができます。

LinkIcon腎臓の働き(GFR)を推算

下の様な表が出てきますので 性別、年齢、クレアチニン値を記入するだけで eGFR が表示されます。

年齢とクレアチニン値は、半角数字で入力して下さい。

健常者のeGFRは 100 mL/分 前後で、腎機能障害が進行するとともに、また加齢により低下して行きます。血清クレアチニンが正常値でも腎機能が正常とは限りません

慢性腎臓病(CKD)診療ガイドでは腎機能の重症度(病期)評価には eGFR値を重要な指標として用いています。

ckdstage

(2013.10.20)