EVERY GOOD BOY DESERVES FAVOUR ―童夢 ( THE MOODY BLUES )

moody-blues

EVERY GOOD BOY DESERVES FAVOUR-童夢 ( THE MOODY BLUES ) / 1971年1月発売

THE MOODY BLUES は1964年にデビューしたイギリスのProgressive Rock バンドで 世代的にはBEATLESやTHE ROLLING STONES, THE WHO などと ほとんど変わらずロック黎明期に誕生したバンドの一つです。
バンドは John Lodge とJustin Hayward が加入してからメロトロンやシンセサイザーなどの電子楽器を駆使してProgressive な色彩をいっそう強めました。1967年発表の2nd アルバム「DAYS OF FUTURE PAST」では 1960年代の段階でオーケストラとの共演を行って新しいロックのスタイルを築き上げるなど Progressive Rock というジャンルを生み出した草分け的バンドの一つであったと言えます。その後は1968年「IN SEARCH OF THE LOST CHORD―失われたコードを求めて」、1969年「ON THRESHOLD OF A DREAM―夢幻」「TO OUR CHILDREN’S CHILDREN’S CHILDREN―子供たちの子供たちの子供たちへ」といったほとんどのアルバムが英米で大ヒットを記録し、PINK FLOYD, KING CRIMSON, YES, EMERSON LAKE & PALMERなどと共に1960~70年代のProgressive Rock Movement を支えたとされています。かつて LED ZEPPELIN のJimmy Pageは本当にProgressive なバンドはPINK FLOYD と THE MOODY BLUES だけだと述べています。

このような経歴をもつ彼らが1971年に発表したのが「EVERY GOOD BOY DESERVES FAVOUR―童夢」でした。それまでの彼らのアルバムは歌詞に重点が置かれていたため 日本人には理解されずあまり評価されませんでした。しかし このアルバムでは音の構成やメロディーも重視しているので、日本人にもわかりやすくなり、その結果 日本ではこのアルバムから彼らの評価が急に高まりました。

このアルバムは神秘的なジャケットが実に素晴らしく、壁に飾りたくなってしまいます。先のIN THE COURT OF THE CRIMSON KING のジャケットと同じくロックの歴史に残るジャケットと言えるでしょう。
このアルバムはProgressive Rock の世界では5本の指に入る大傑作だと断言できます。私も何回聴いたか覚えていませんが、不思議なことに何回聴いても飽きのこないアルバムです。アルバムの邦題「童夢」は原題の直訳ではないのですが、ジャケットの雰囲気や曲の印象を実に良く表している名訳と言えます。このアルバムは彼らの最高傑作と言われているだけに 捨て曲なしで どの曲も牧歌的で美しいコーラスとメロトロンに包まれた荘厳な世界を創り出しています。

1 曲目のProcession はシンセサイザーのフレーズで始まる いかにもProgressive Rock と言える曲です。「Desolation」「Creation」「Communication」の3 語のみの歌詞でシタールやメロトロンを使って荘厳な雰囲気を出し、この3 語を使ってこのアルバムのメッセージを聴く人に投げかけているようです。2 曲目の The Story in Your Eyes はこのアルバムの中で最もメロディアスで素晴らしい曲ですが、イントロの distortion の効いたギター・リフを聴くとProgressive Rock というよりノリのよいスピード感のあるClassic Rock と言えるでしょう。中程でのメロトロンによるコーラス、オーケストレーションが実に壮大で最大の山場を作っています。また途中に入るギター・ソロも素晴らしい出来です。
「After You Came」「Emily’s Song」「One More Time to Live」なども素晴らしい曲で、なかでも「Emily’s Song」はメロトロンのオーケストレーションが中心の浮遊感のある心休まるフレーズが聴ける曲です。
最後の「My Song」は「童夢」というタイトルどうりの子供の心が捉えた風景をそのまま具体化した様な物語性を持つ名曲です。キーボード、フルート、メロトロンなどによってどこか郷愁を感じさせるメロディーが静かに奏でられたかと思うとIN THE COURT OF THE CRIMSON KING の様にドラムの突然の盛り上がりと共にメロトロンによる壮大な交響曲の展開となり 「これこそProgressive Rock!」 と納得させられる 本アルバム中、最大のスケールを感じさせる曲です。

KING CRIMSON がそうであったようにTHE MOODY BLUES も メロトロンなどの楽器を用いた高度な演奏テクニックに頼るばかりでなく、歌詞に重みをおき、難解な歌詞で歌の心を表現しようとしていると言えますが、これがこの時代のProgressive Rock バンドの特徴でしょう。