IN THE COURT OF THE CRIMSON KING ( KING CRIMSON )

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IN THE COURT OF THE CRIMSON KING ( KING CRIMSON ) / 1969年10月発売

 

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KING CRIMSON ?( 1969 年 )

これまで紹介して来たアルバムは 1960年代後半から1970年代前半にかけて ブールスを基盤とし、鳥肌の立つようなギター・リフを武器に 大観衆のいるライブ会場で大音量で押しまくる Classic Rock という分類に入る音楽でした。その最たるものが CREAM であり、その後 世界を制覇した LED ZEPPELIN でした。

ところが THE BEATLES が アルバム ABBEY ROAD をリリースした1960年代末期には 英国の片隅でサイケデリック・ムーブメントの中からプログレッシブ・ロック( Progressive Rock ) と言われる独創的な音楽を追求する先進的な MOODY BLUES, PINK FLOYD, KING CRIMSON といったバンドが生まれました。これからしばらく これらのバンドが生み出した傑作アルバムを紹介しましょう。なかでも クラシックやジャズの要素を巧みにとりいれ、深遠なProgressive Rock の世界を構築した KING CRIMSON はデビュー・アルバム「In The Court Of The Crimson King」で世間を唸らせ確固たる地位を確立したばかりでなく、その後のロック史にも多大な影響を与えました。
これらのバンドの影響でProgressive Rock は70年代前半に隆盛を極め、ジャズ、クラシック、ブルースとすべてを取り入れて 高尚な主題と卓越したテクニック、難解で知的な歌詞で 労働階級のものとされていたロックを上流階級まで広める働きをしました。

KING CRIMSON というバンドの歴史はかなり長く、ギターのRobert Fripp がリーダーで不動のメンバーでした。彼は概念を表現する方法として音楽を選び、思想を音で具体化したとされる音楽家と言われています。このバンドの歴史は1969年からRobert Fripp が音楽界からの引退を宣言した2011年までとされており、この間にバンドに在籍したメンバーは実に19人にものぼります。このためアルバムを聴き比べてみると 音楽性が多様でとても同じバンドの作品とは思えません。また在籍したメンバーも素晴らしい人が多く、その後 Emerson Lake & Palmer や YES といった著名なバンドも生まれました。

デビュー・アルバムの「In The Court Of The Crimson King」は ギターのRobert Fripp, ボーカルとベースのGreg Lake, キーボードやサックスをはじめとするマルチ・プレーヤーで主に作曲担当のIan McDonald, ドラムのMichael Giles, そして作詞担当のPete Sinfield というメンバーで作られました。しかし この黄金のメンバーで作られたのはこの1枚のみでした。
このアルバムはロックの歴史に残る名盤だと断言できますが、この他のアルバムは難解な曲や詞が多く、私にはよく理解できないし、良いとも思えません。

このアルバムの特徴はまず印象に残るジャケットでしょう。最近このような手の込んだジャケットを見ることが少なくなったのは残念です。
音楽的な一番の特徴は Ian McDonald によりメロトロンが導入され、オーケストラの様な壮大な雰囲気や時には心地よい浮遊感を創り出していることです。またサックスやフルートといった当時はあまりロック・バンドで使われることの多くなかった楽器を導入し、新たな音楽を創造したのも彼の功績です。さらに このアルバムのみの参加で その後 Emerson Lake & Palmer を結成したGreg Lake の深みのあるボーカルとベースの腕も見逃せない点です。
作詞専門という特殊なメンバーであるPete Sinfield の功績も大です。彼の詞はかなり難解ですが、ロックミュージックに壮大なスケールの世界観を持ちこみ バンドの方向性を決定付けたということで評価されています。

①21st Century Schizoid Man (21世紀の精神異常者)

異常者が正常で正常者が異常とみなされる未来社会を主題とした曲で ギターのリフを前面に押し出し、ボーカルにもdistortion をかけたヘビーな曲で この後に続く壮大な展開の曲を引き立たせるのに役立っています。ドラムのMichael Giles はジャズ畑の出身で中ほどで聴かれる彼のすさまじいプレイはまさにジャズ・ドラムです。

②I Talk To The Wind(風に語りて)

一転してメロディー・ラインの美しい曲で フルートを前面に出した英国のトラッドな雰囲気です。異常な未来社会において 話し相手は風しかいないと歌っています。

③Epitaph(墓碑銘)

前2曲で絶望的世界を歌いつつ、この曲で未来への光を歌っています。やや暗い曲調ですが、日本人好みの音階を含んでおり このアルバムの中では最も受け入れやすい曲です。メロトロンによるオーケストレーションが壮大な雰囲気を創り出しており、メロトロンを使った作品の中で最高傑作とされています。
作詞面では「Confusion will be my epitaph-混乱こそ我が墓碑銘」という一節はロック史に残るものとされています。
Greg Lake の声量ある澄み切ったボーカルもこの作品を素晴らしいものにするのに貢献しています。

④Moon Child

美しい曲で後半の8分間に眠気を誘う浮遊感のある演奏が延々と続きます。それが突然終わって最期の曲が始まる演出がアルバムの締めの曲を盛り上げるのになんともすばらしく役立っています。

⑤The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)

同名のアルバムの締めの曲として最高の出来の曲です。前曲が終わった後、突然のドラムのフィルインで始まり、メロトロンによる壮大なオーケストレーションが幕を開けます。ギター、ボーカルと展開して 静と動が繰り返し、ストーリーが展開して行きます。メロトロンによるオーケストレーションの音圧はすさまじく、この曲を限りなく壮大なものにしています。

このアルバムは圧倒的な演奏力、構成力、作曲力がうまくバランスされ、最初から最後まで一気に聴けてしまいます。
BS-TBS の番組「Song To Soul ~永遠の一曲」でこのアルバムが取り上げられており、Ian McDonald と Pete Sinfield が KING CRIMSON 誕生前後の状況やこのアルバム制作の秘話を語ってくれています。今後も再放送があるものと思います。

(訳詞)

EPITAPH

The wall on which the prophets wrote
Is cracking at the seams
Upon the instruments of death
The sunlight brightly gleams

When every man is torn apart
With nightmares and with dreams
Will no one lay the laurel wreath
When silence drowns the screams?

Confusion will be my epitaph
As I crawl a cracked and broken path
If we make it we can all sit back and laugh
But I fear tomorrow I’ll be crying
Yes, I fear tomorrow I’ll be crying

Between the iron gates of fate
The seeds of time were sown
And watered by the deeds of those
Who know and who are known

Knowledge is a deadly friend
When no one sets the rules
The fate of all mankind I see
Is in the hands of fools

Confusion will be my epitaph
As I crawl a cracked and broken path
If we make it we can all sit back and laugh
But I fear tomorrow I’ll be crying
Yes, I fear tomorrow I’ll be crying

予言をしたためた壁は
つなぎ目から崩れ落ち
死をもたらす武器の上
陽光は降り注ぐ
夢と悪夢に引き裂かれ
静寂が叫びを押し殺すとき
栄冠などありはしない

混乱こそ我が墓碑銘
ひび割れた小道を私は這う
なんとかなるというなら
笑って傍観してもいよう
だが私は明日を恐れ、泣き叫ぶ
明日を恐れ、泣き、叫ぶのだ

宿命の扉の狭間に
時間の種子は播かれ
知るものと知られるものが
それに水を撒く
だが掟をもたらす者なくば
知識とは厄災の友
人類の運命は愚か者の手中にある

混乱こそ我が墓碑銘
私は明日を恐れ、泣き叫ぶ
明日を恐れ、泣き、叫ぶのだ