関節リウマチ患者さんの肺炎球菌ワクチン接種について

生物学的製剤の投与を受けている関節リウマチの患者さんは 重症の細菌性肺炎にかかることがあるので 是非、接種を受けておくべきです

(1)肺炎球菌ワクチンとは

日本人の死因の4番目が(細菌性)肺炎です。高齢者を中心に肺炎で亡くなる人は年間8万人に達します。
中でも、高齢者の重症市中肺炎(一般家庭で暮らす人の肺炎を市中肺炎という)の約 50%、院内肺炎(入院中の患者さんがかかる肺炎のこと)の約 10%が肺炎球菌によるとされています。
「肺炎球菌ワクチン」は、高齢者の肺炎の原因となる病原体の中で 最も頻度の高い「肺炎球菌」という細菌を狙った予防ワクチンです。もちろん、肺炎球菌以外の微生物による肺炎の予防効果はありません。したがって「肺炎球菌ワクチン」はすべての肺炎に有効ということではありません。しかし このワクチンには 肺炎予防効果と共に肺炎になっても軽症ですむ効果や抗生物質が効きやすいなどの効果が見られます。
つまり、近年、ペニシリンなどの抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加し、30~50 %にもおよぶといわれていますが、肺炎球菌ワクチンはこの様な耐性菌にも効果が見られるのです。さらに インフルエンザにかかった高齢者の 1/4 が細菌性肺炎になるとも言われていることから、インフルエンザワクチンとの併用が望ましいとされています。
現在 日本では ニューモバックスRという製品が販売されていますが、残念ながら まだ健康保険の適応にはなっていません。最近、日本感染症学会で老人施設の高齢者 1000 人を対象とした 3 年間の研究結果が発表されました。それによるとワクチン接種者は未接種者に比べて(細菌性)肺炎の発症率が45 %少なく、肺炎球菌性肺炎が 63 %少ないことがわかりました。さらに驚くべきことは 未接種者で肺炎球菌性肺炎を発症した 37 人のうち 13 人( 35.1 % )が死亡したのに対し、ワクチン接種者では死亡者がいなかったということです。
「肺炎球菌ワクチン」の効果は 5 年とされています。日本では 再接種が許可されていませんでしたが、2009 年から 65 歳以上の高齢者、免液不全のある人、免液抑制剤の投与を受けている人などに対して 初回接種から 5 年以上経った場合に認められました。

(2)関節リウマチ患者さんの細菌性肺炎予防対策としての「肺炎球菌ワクチン」接種

関節リウマチの患者さんは 治療薬として ステロイドホルモン、メトトレキサート( MTX )、さらには生物学的製剤など 感染症に対する免液応答を抑える薬剤を投与されている場合が多くあり、このため呼吸器感染症をこじらせて 肺炎を起こし 寿命を縮めてしまうことがあります。特に 生物学的製剤は 最近、多く使われる傾向にありますが 強力な免液抑制作用を持つため 重症の細菌性肺炎を完全に避けることは難しく、慎重な投与が必要です。
免液抑制作用を持つ治療薬の投与を受けている関節リウマチ患者さんの細菌性肺炎予防対策としては

(1) カゼの予防に努める(マスク、手洗い、冬場は人ごみの中に出かけない)
(2) カゼをひいた場合は メトトレキサートや生物学的製剤の使用を一時中止あるいは延期する
(3) 高熱や濃厚な色の痰が続く場合は すぐ主治医の診察を受ける
(4) 禁煙(喫煙は肺炎の危険を 4 倍増加させるという報告あり)
(5) ワクチンの接種(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン)を受ける

などがあり、これらを実行することで感染症の危険を少しでも減らすことが重要です。
(2011.12.13)