関節リウマチに対する抗サイトカイン療法について(生物学的製剤の登場)

関節リウマチに対して メトトレキサート(MTX) が使用可能となり、そして 生物学的製剤が登場したことにより、寛解(関節リウマチによる痛み・腫れがなく、炎症所見がない状態である臨床的寛解)が 現実のものとなりました

関節リウマチは、関節の痛みや腫れに悩まされるだけでなく、進行すると関節の変形や破壊にも苦しめられる厄介な病気ですが、従来の薬物療法では病気の勢いを弱めて進行を遅らせる治療しかできませんでした。ところが、最近の研究により、サイトカインというタンパク質が種々の病気を起こしたり、症状の進行と関わったりすることが分かってきました。その中でもTNFやIL-6に代表されるサイトカインは、リウマチの炎症に関わる数多くのサイトカインを誘導し、関節の腫れや骨破壊に直接関係していることが明らかにされました。

そこで登場したのが抗サイトカイン療法です。この療法に用いられる薬剤は、TNFやIL-6の役割に注目して、これらを標的とした抗体やさらにそれらの受容体を標的とした薬剤で、ここ10年近くの間に欧米において相次いで関節リウマチに用いられるようになり、日本でもここ数年の間に使われるようになってきました。これらはリウマチの症状に対してきわめて強力な治療効果を示し、さらには関節破壊を抑える効果もあるところからリウマチの治療そのものの姿を変化させつつあります。最近の知見では、発症早期(2年以内)からの抗サイトカイン療法により、30~50%の症例で、炎症と自他覚症状の消失を意味する臨床的寛解が得られることが分かってきております。薬剤によっては臨床的寛解に突入後、一定条件を満たすことができれば、投与を中止しても臨床的寛解が持続することが確認されています。しかし、日本において、このような抗サイトカイン療法を受ける患者様の多くは、これまでのリウマチ治療剤に対して効果が低い方や、どちらかといえば症状が進行してしまった方に用いるというのが一般的な傾向で、発症早期から用いられることはまだ少ないのが現状です。

しかし、抗サイトカイン療法にも問題点がないわけではありません。

まず、抗サイトカイン療法は保険診療で行なっても、年間50万円近くが患者様の自己負担となります。なぜならば、これらの薬剤は生物学的製剤と言って、最新のバイオテクノロジーを駆使して開発された新しい薬剤であり、その製造過程にかなりの金額がかかるからです。また、感染症や、併用するメトトレキサートの副作用のモニタリングを絶えず行なっていかなければなりませんが、これは抗サイトカイン療法に手馴れた専門の医師の下で行なう必要があるのです。

現在、日本で使用することのできる生物学的製剤は、『インフリキシマブ(レミケードR)』『エタネルセプト(エンブレルR)』『アダリムマブ(ヒュミラR)』『トシリズマブ(アクテムラR)』です。さらに、2010年9月から国内で5番目に承認された生物学的製剤である『アバタセプト(オレンシアR)』が使用可能になりました。この薬剤は、サイトカインを産生するリンパ球の中のT細胞の働きを抑え、病気をより根本に近い段階から抑えるので、既存の4種の抗サイトカイン製剤による治療では効果不十分な患者様にも効果が期待されています。

(2010.10.15)